(注)キューバは、驚くべき農業実験、世界初の国を挙げた代替農業の試験を開始した。一九八〇年代半ば、キューバ政府は国立の研究機関に命じて、環境への影響を減らし、土壌肥沃度を改善し、収穫を増大させる代替手段の調査に着手した。ソ連崩壊から六カ月と経たないうちに、キューバは工業化された国営農場を民営化し始めた。国営農場はかつての労働者に分けられ、小規模農場のネットワークを作りだしたのだ。政府が後援する直売所は流通コストを削減することで小規模農家の利益を増やした。政府は大規模なプログラムで、有機農業と都市の空き地での小規模農業を奨励した。化学肥料と農薬が手に入らないため、生まれ変わった小規模な民営農場と何千というごく小さな都市市場菜園は、好むと好まざるとにかかわらず有機農場になった。
知識集約型農業を、禁輸されている慣行農業に必要資材の代用にするという役割を担ったキューバの研究施設は、代替農業の実験を基礎とした。それはソビエト体制下では無視されていたが、新たな現実のもとで広い範囲で、しかも即座に実行できるものだった。
キューバはより労働集約的な方法を、大型機械と化学資材に代えて採用した。しかしキューバの農業革命は単なる伝統農業への回帰ではない。有機農業はそれほど単純ではない。誰かに鍬を渡して、プロレタリアートに食糧を与えよと命令すればいいというものではないのだ。キューバの農業改革は、ソビエト時代の高投人の機械化農業と同じくらい科学に立脚したものである。違いは、従来のやり方が化学の応用に基づいていたのに対し、新しいやり方は生物学――農業生態学――の応用に基づくことだ。
灌漑、石油、化学肥料、農薬の使用を増やすことを前提に世界の農業を変えた緑の革命とはほは反対に、キューバ政府は農業を現地の条件に適応させ、生物学的な施肥と害虫駆除の手法を開発した。生物学的害虫駆除に加えて、低投入不耕起農法について農民にアドバイスするため、政府は、全国に二〇〇を超える地方の農業振興事務所のネットワークを構築した。
キューバは砂糖の輸出をやめ、再び国内向けの食糧の栽培を始めた。一〇年のうちに、キューバ人の食生活は、食糧を輸入せず農業用化学製品も使用せずに、元の水準に戻った。キューバの経験は、工業的な手法やバイオテクノロジーを使わずとも、実行可能な農業の基礎を農業生態学によって作り上げることができることを示す。期せずして、アメリカの経済制裁はキューバを国家規模の代替農業の実験場に変えたのだ。(『土の文明史 : ローマ帝国、マヤ文明を滅ぼし、米国、中国を衰退させる土の話』、デイビッド・モントゴメリー著、片岡夏実訳、築地書館、2010年、p316〜317)
キューバはより労働集約的な方法を、大型機械と化学資材に代えて採用した。しかしキューバの農業革命は単なる伝統農業への回帰ではない。有機農業はそれほど単純ではない。誰かに鍬を渡して、プロレタリアートに食糧を与えよと命令すればいいというものではないのだ。キューバの農業改革は、ソビエト時代の高投人の機械化農業と同じくらい科学に立脚したものである。違いは、従来のやり方が化学の応用に基づいていたのに対し、新しいやり方は生物学――農業生態学――の応用に基づくことだ。
灌漑、石油、化学肥料、農薬の使用を増やすことを前提に世界の農業を変えた緑の革命とはほは反対に、キューバ政府は農業を現地の条件に適応させ、生物学的な施肥と害虫駆除の手法を開発した。生物学的害虫駆除に加えて、低投入不耕起農法について農民にアドバイスするため、政府は、全国に二〇〇を超える地方の農業振興事務所のネットワークを構築した。
キューバは砂糖の輸出をやめ、再び国内向けの食糧の栽培を始めた。一〇年のうちに、キューバ人の食生活は、食糧を輸入せず農業用化学製品も使用せずに、元の水準に戻った。キューバの経験は、工業的な手法やバイオテクノロジーを使わずとも、実行可能な農業の基礎を農業生態学によって作り上げることができることを示す。期せずして、アメリカの経済制裁はキューバを国家規模の代替農業の実験場に変えたのだ。(『土の文明史 : ローマ帝国、マヤ文明を滅ぼし、米国、中国を衰退させる土の話』、デイビッド・モントゴメリー著、片岡夏実訳、築地書館、2010年、p316〜317)
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