2024年7月12日金曜日

全能になる術

 放送大学の面接授業で紹介されてから、ノヴァーリスに関心を持って読むようにしてきました。心に響く言葉が多いからです。
 例えば、68は、今風に言えば、セルフコントロールの重要性を説いたものです。といって仕舞えば簡単ですが、同じようなことを説いても、「われわれは身体も霊魂もともに支配できなければならない」、と言われると、ズシリと心に響きます。そして、「身体は世界を形成し変化させる道具であるから」、セルフコントロールによって道具を変えれば、「世界を変えること」ができる、というのです。
 69の方は、認識に関するものです。読んで一人で納得しただけでは、知ったことにならない、なんらかの手段をもって表現して初めて、その対象を認識したことになる、というのです。しかし、表現は、認識を深めるだけではありません。思いがけずのアイデアが湧いてくるといった優れた側面もあるようです。具体的に言えば、「本書の執筆によって、私の世界観は変化した。『すべては量子でできている』は説明として始まったが、熟考へと発展した。執筆する題材について深く考えていくうちに、思いがけず二つの包括的なテーマが出現したのである。それらの明瞭さと深さに私は驚いた」(『すべては量子でできている 宇宙を動かす10の根本原理』、フランク・ウィルチェック著、吉田三知世訳、筑摩書房、2022年、p18)、という具合です。だから、もっと表現というものに、こだわってみたいです。

68 全能になる術――われわれの意志をあますところなく実現する術。われわれは身体も霊魂もともに支配できなければならない。身体は世界を形成し変化させる道具であるから―ーわれわれは、身体を万能の(原文は傍点、以下同)器官につくり変えようと努力する必要がある。われわれの道具を変えることが、世界を変えることになるのだ。

69 われわれがなにごとかを知っているのは――それを表現する――あるいはつくりあげることができる場合にかぎられる。つくり方と仕上げ方が巧みで多様なほど、われわれはよりよく知るようになる――なにごとであれ、われわれがそれをなんらかの方法で至るところへ運んでゆき、刺激に変えることができるときーーつまりあらゆる器官の内部に、それについての独自の表現を生じさせることができるとき、われわれはそれを完全に知ったことになる。 『ノヴァーリス全集 第2巻』、ノヴァーリス著、沖積舎、2001年、p108

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