2024年3月19日火曜日

人間が犯す最大の愚行(凶行)

 市立美術館の常設展で、一冊の版画集ジャック・カロ作『戦争の惨禍』が目に止まりました。展示されていた版画が、「絞首刑」という殺した遺体を木に吊るした酷たらしいものだったからです。

ジャック・カロ作「絞首刑」

 早速、ジャック・カロについて調べました。そして、一連の戦争画が、「これはまさに画家として経済的に独立していたカロにしかなし得なかった、視覚表現史に特筆されるべき画期的な作品でした」(『ジャック・カロを知っていますか? バロックの時代に銅版画のあらゆる可能性を展開したジャック・カロとその作品をめぐる随想』、谷口江里也著、ジャック カロ絵、未知谷、2023年、p248)と評価されていることを知りました。
 また、戦争画の多くは戦勝画でした。「ところが『戦争の悲惨』(注)には、人間が犯す最大の愚行であり凶行である戦争がもたらすさまざまな悲惨と悪行が描かれていました」(上同、p249)。このようにジャック・カロは戦争画を通して戦争の本質を訴えて(伝えて)いますが、『ジャック・カロを知っていますか?』の著者谷口江里也さんは、言葉を通して見事に戦争の本質を伝え、訴えてくれていました。世界で戦禍が止まない現実を前にして、耳を傾けたい言葉です。
 注:美術館では『戦争の惨禍』とあって書名が違うのは単なる訳の違いかもしれません。
 
 そこに描かれているのは殺戮や掠奪などの非人間的かつ極限的な暴力であり醜悪な悪行です。そしてそれが戦争という現実だということが画面を通して痛々しく伝わってきます。勝利や勇気や栄光や正義などといった、しばしば戦争というものと共に用いられる言葉がもたらす勇ましい響のようなものは、そこには微塵もありません。(上同、p249〜250)

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