2022年8月26日金曜日

戦争の根源としての憎悪

 アウシュビッツから生還した元国際司法裁判所判事、トーマス・バーゲンソールさんの「ジェノサイドと現代」というインタビュー記事を読んで、よく言われてきた「憎しみの連鎖」こそが戦争の根源であることを学んだ。このインタビューで、「憎悪がある限り戦争は起き、戦争が起きれば相手を殺してしまい、また憎悪が生まれる。それはどうしてもやめさせなければならない。・・・・憎悪をやめること、やめさせること。そして憎悪が政治家たちに影響を及ぼす状況を作ってはいけない。このほかに解決はありません」と言い切っているからである。
「もし私たちが『憎悪のサイクル』を持ち続けたら、世界はどうなるでしょう。ドイツとユダヤの対立は、続けてはならないと思います。むしろ大事なことは、我々の孫たちや、さらに子孫の世代が仲良くできること、殺し合わない環境を作ることです。その始まりの部分を我々の世代が作らなければならないと考え、これまでやってきました」とも言っている。
 それでは『憎悪のサイクル』を断ち切るためには、どうすればいいのでしょうか。トーマスさんは、「大事なことは教育です。未来の世代に対する私たちの義務です。他者に対する憎悪を扇動するような動きが出てきても、それを拒絶すること。それを教えることです」「なるべく早く、小さい時から教えて欲しい。公教育で。小学1年生から始めてもいい。皮膚の色や目の色、発音が違っていても悪い人ではないと認識させることが大事です。学年が上がるにつれて、なぜ人は悪いことをするのか、どうやったら悪い指示や命令に抵抗できるのかなど、具体的な内容に入っていけばいいと思います。高学年になれば過去のこと、ホロコーストを教えることも大事です」と言っている。
 確かに、このような教育は大事である。しかし、この世には善人と悪人がいるのではなく、「もともとは普通の人たちが、特定の条件に置かれるとそういう(残虐な)行為に走る、ということ」を周知させることの方が重要なのではないだろうか。水戸黄門、忠臣蔵は日本人に好まれている作品だが、そうした作品を通じて、この世には善人と悪人がいることを学び、憎悪の感情が育くまれてきたのではないだろうか。
 そこで、水戸黄門、忠臣蔵における憎悪の感情の発生と成長というようなテーマを持った、作品の研究を思いついた。さらに、社会の中の不寛容による憎悪が存在して「力を持つ集団が別の集団を憎悪し、それがジェノサイドを引き起こします。表面的には何もないように見えても、すぐ下ではびこっていることを意識してほしい」という指摘は、社会にはびこっているイジメ問題の温床になっている可能性が大きい。このことも、詳しく調べてみたい。
 また、「大学生を対象に、ある集団は捕虜に、別の集団は収容所の警備兵に分けました。すると、警備兵役の学生たちは時間がたつにつれて残虐さを増していった」という興味ある実験を示し、「状況が人間をどう変えるかがわかります」と言っている。この実験は、国防軍を創設することの危険性を教えている。どちらにしても、国防軍が寛容と相入れないことは明らかである。そういう意味でも、国防軍の創設には問題かある。
「アウシュビッツを一人で生き抜いた少年」(朝日文庫)などの著書がある過去の悲劇の展示だけなら『歴史の墓場』です。人権の観点から未来につなげ、人類全体が二度と起こしてはならないと訴えることが重要です」

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