2021年12月23日木曜日

毎日があたらしい

 左手のピアニスト舘野泉さんのことを「全身全霊で音楽を弾く」に書いた。舘野泉さんの何がすごいか、それは、脳出血で半身不随になってピアノを弾けない日々を乗り越えて、左手のピアニストとして再出発してしまったことであろう。人間のその可能性に大いに励まされるものがある。だからこそ、語られる言葉にも光るものがある。
 雑誌『暮しの手帖』(2021年6月~7月号)に「毎日があたらしいから」という、舘野泉さんについての取材記事(渡辺尚子文)があった。
舘野泉さんの生きる姿勢に惹かれる。
5歳でピアノを始めてから
84歳の今に至るまで
舘野さんの想いは変わらない。
だから毎日全身で弾くのだ

 朝起きて、ピアノの前に座って鍵盤に触れる。そのたびに舘野さん「ああー俺は生きているんだな」と思う。ピアノの音が立ち上がる瞬間、あたらしい一日が生まれてくる。

 毎日ピアノの練習を欠かさない。気持ちが乗らない日もあるが、休まず弾く。うまくできず、打ち込む日は「今日はここまでだ」と考え、何日かおいて同じ課題に取り組む。 そうやって繰り返すと、ステージで、自分も知らなかった音が鳴る。(『暮しの手帖』、2021年6月~7月号、p6〜7)
 舘野さんは読書好きだそうで「物語のあらすじよりも、そこから感じることに惹かれる」というところに共感を覚えた。最後に座右の書一冊が紹介されていた。
 常に手元にあるのは『若く逝きしもの』、フィンランドを代表するノーベル賞作家シッランパーの小説だ。舘野さんは高校生の時に偶然、近所の古本屋で見つけた。若く貧しい娘が死の床につきながらも、最後までおのれを生きようとする気力を失わない。その姿に生きる誇りを感じ、折々に読みかえしている。(上同、p9)

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