2021年8月21日土曜日

洞窟(がま)の奥に座っている魂

 茨木のり子の詩に「あなたはエジプトの王妃のように/たくましく/洞窟の奥に座っている」で始まる「魂」という詩がある。私はこの詩から、沖縄戦で八十四人の集団自決があった「チビリがま」(ここから沖縄の悲劇が始まった)という洞窟のことを想像し、逆に、この洞窟のことを想像しながら、この詩を読んだ。

あなたはエジプトの王妃のように
たくましく
洞窟の奥に座っている

あなたへの奉仕のために
私の足は休むことをしらない

けれど私は一度も見ない
暗く蒼いあなたの瞳が
湖のように 微笑むのを
睡蓮のように花開くのを

あなたはいつも瞳をあげぬ

いまなお<私>を生きることのない
この国の若者のひとつの顔が
そこに
火をはらんだまま凍っている(「『対話』、茨木のり子著、童話屋、2001年」より短く編集して紹介した)
 最後の「いまなお<私>を生きることのない/この国の若者のひとつの顔が」「火をはらんだまま凍っている」という表現が、なんとも強烈だった。「凍」とは矛盾した「火」という言葉で、作者は何を表現したかったのだろう? 私には、強烈な死者の怨念のようなものに思えた。

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