茨木のり子の詩に「あなたはエジプトの王妃のように/たくましく/洞窟の奥に座っている」で始まる「魂」という詩がある。私はこの詩から、沖縄戦で八十四人の集団自決があった「チビリがま」(「ここから沖縄の悲劇が始まった」)という洞窟のことを想像し、逆に、この洞窟のことを想像しながら、この詩を読んだ。
魂
あなたはエジプトの王妃のように
たくましく
洞窟の奥に座っているあなたへの奉仕のために私の足は休むことをしらないけれど私は一度も見ない暗く蒼いあなたの瞳が湖のように 微笑むのを睡蓮のように花開くのをあなたはいつも瞳をあげぬいまなお<私>を生きることのないこの国の若者のひとつの顔がそこに火をはらんだまま凍っている(「『対話』、茨木のり子著、童話屋、2001年」より短く編集して紹介した)
最後の「いまなお<私>を生きることのない/この国の若者のひとつの顔が」「火をはらんだまま凍っている」という表現が、なんとも強烈だった。「凍」とは矛盾した「火」という言葉で、作者は何を表現したかったのだろう? 私には、強烈な死者の怨念のようなものに思えた。
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