2020年12月8日火曜日

理性の眠りは怪物を生む

 ゴヤの「理性の眠りは怪物を生む」(東京富士美術館)は、『気まぐれ』を構成する80枚の版画の中でも代表作として知られている作品で、プラド美術館にある本作の素描には、以下の趣旨の注釈が加えられている。「夢を見ている作者。有害な迷信を打ち破り、この作品によって真実を永遠のものとすること。これが作者の唯一の目的である。」
 ゴヤには、『戦争の悲惨』という一連の作品もある。私には、理性の眠りによって魔性の人間が誕生し、そうした魔性の人間(怪物)が戦争の主体となって、描かれているとしか思えない。次の言葉が、それを証明している。

 結局、こんなハゲタカのような悪魔たちの餌食になるのは何の罪もない普通の人々。戦争で悲惨な目にあい、子どもをなくし親をなくし、恋人や仲間をなくし、飢えに耐え、あるいは耐えきれずに餓死してしまった人々を、権力者たちは見つめたりなどしない。ほとほりが冷めた途端に現れて、生き残った人々を、当たり前のように再び餌食にし始める。前頁の悪魔が何を書きつけていたのかはしらないが、その結果、苦しめられ、命さえ踏みにじられるのは、またしても市民。 (『戦争の悲惨』、谷口江里也著、未知谷、p148)

 理性を眠らせてはいけない!、そうゴヤは訴えているのだ。

気まぐれ/43 理性の眠りは怪物を生む:東京富士美術館


0 件のコメント:

コメントを投稿