2020年10月3日土曜日

平和をつくりあげる

平和 
ヤロスワフ・イバシュキェビッチ(ポーランド) 


地上の平和は
鳩のように舞いおりてくるのでもなく
季節のように
自然に訪れるのでもない
そして 光のように
ふり注ぐものでもない

地上の平和は
花束から 生れるのではなく 
稲光や
雲の上にあるのでもなく
青い虹から
流れてくるのでもない

地上の平和は
われわれの意志から
生れるのでなくてはならない

われわれの体から 血が噴き出すように
われわれの努力から
ゆっくりと
少しずつ
成長していくものだ


地上の平和は
われわれの 労働から
火のように燃える
そして手と手を
固く握り合うことから生れる
人々の
固い足踏みから
地上のすべての人々の
叫びから (「『名詩に学ぶ生き方(西洋編)』、荒井洌著、あすなろ書房」より、太字強調は引用者による

 この地上に戦争がなく、いつのときも平和であってほしい、とわたしたちは願っています。
 けれども平和は、その願いによって、むこうから自然のままにやってくるものではありません。うつくしい花束をもっているからといって、平和になるのでもありません。
 みんなで「戦争はしない。平和をつくりあげるのだ」と努力してこそ、世界は平和になっていくのです。それぞれにはたらき、手と手をにぎりあって心をかよわせ、戦いをおこすまいとかたく信じあってこそ、平和がうまれるのです。
  ―― 戦争はいけないと口でいいながらも、よほどしっかりと足をふみしめていないと、口実をもうけて戦争をはじめるのが人間です。武器で殺しあうのですから、どちらの人びとにとっても悲劇をもたらします。
 この詩では、平和をまつ(原文は傍点)のではなく、努力してつくりあげる(原文は傍点)のだといっています。あたりまえのことのようで、じつはなかなかむずかしいことなのです。(荒井氏による解説、太字強調は引用者による)

 ヤロスワフ・イバシュキェビッチ(一九二一年~)は、ポーランドの現代詩人、小説家、劇作家、評論家、翻訳家。ウクライナに生まれた。
 二十一歳でキエフの雑誌に詩を発表しはじめ、首都ワルシャワに出たのち詩集『八行詩』(一九一九)をあらわしたが、文学活動とともに政治に関心をもち国会議長書記となった。
 第二次世界大戦のドイツ軍占領下では地下組織の文化運動に加わり、戦後間もなく詩集「詩選集」(四六)や小説「尼僧ヨアンナ』(四六、のちに映画化)などを発表するとともに、ジャーナリストとして幅広く活躍した。五二年より国会議員となり、国際平和擁護運動を推進した。
 掲出詩の訳者・つかだみちこ(一九三二・昭和七年~ )は、東京生まれ。ポーランド文学者。 (掲出詩は、つかだみちこ/他訳『現代東欧詩集』土曜美術社、一九八九年刊より)

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