哲学を学ぶ人々は、ソクラテスなどの哲学者を輩出した古代のギリシャ時代からいました。それだけでなく、当時の哲学書が、今でも読み継がれているのですから驚きです。しかし、人生の途上で哲学を学ぼうとするような人は限られています。数こそ知りませんが、哲学など縁がなく「この世」を去る人も多いのです。
それでも今までは良かったのです。物質的に恵まれなかったときは、物質的な満足が即精神的な満足だったからです。その上今までは、ある程度生活が苦しくても、心に不満があっても、「そういうものだ」という諦観(あきらめ悟ること)が身についていたに違いないのです。
しかし、物質的に満ち足りた人々が増えてくると、物質的なことで精神的な満足を得ることが難しくなってきます。さらに、これだけ情報が発達してくると、欲望も増幅され、諦観する人も少なくなっていると思われます。だからこそ、ストレス社会などと呼ばれ、癒しという言葉もよく使われるようになってきているのです。
精神的に満たされず、さりとて現状を諦観できない人が求めるもの、それこそが哲学です。心の世界、精神世界を考える対象にしている哲学が、これからの社会に最も求められている学問なのです。
『哲学からのメッセージ』(木原武一著、新潮選書)によると、「ひとたびものを考えれば、より正しく、より深く考えることをめざすようになり、ついには哲学に突きあたる」とあり、人間が哲学を求めるようになるのは、ものを考える人間の宿命だと言っています。それにしては哲学の門の敷居は高すぎます。哲学書を読もうとしても、一般の実用書を読むようなわけには行かないからです。これでは、せっかく人々が哲学の門をたたくこようになっても、多くの人は、その先に歩き進むことができません。分かりやすい哲学入門書が求められているゆえんです。
その点、『哲学からのメッセージ』は、恰好の哲学入門書かもしれません。難解な哲学書で有名なカントの『純粋理性批判』について、カント哲学を解読するキーワードになるであろう言葉「形而上学とは人間性のあらゆる開発Kultur(本文は傍点)の完成である」(『哲学からのメッセージ』、p13)を紹介していて、とてもわかりやすいからです。後は、飽きずに読み進めるだけです。
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