2023年5月5日金曜日

憲法9条は決して死んでいない

 政府は、次々と憲法9条に抵触するような悪法を成立させてきた。最近に至っては、集団的自衛権まで認めるような法律まで成立させてしまった。昨年12月、岸田文雄内閣は安全保障の基本方針「国家安全保障戦略」を9年ぶりに改定し、日本が弾道ミサイルなどで攻撃を受けたとき、相手国のミサイル基地を攻撃できる能力を自衛隊が保有することを決めたのである。このような決定を受けて、元内閣法制局長官の阪田雅裕さんが「憲法9条は死んだ」と発言して注目を集めた。そうした発言に違和感を持ちながら、明確な反論もできないもどかしさを感じていた。
 法律によって、どれだけ憲法を蝕もうとも、憲法である9条はが死ぬようなことはありえない。なぜなら、憲法第九八条に「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」とあるからだ。
 さらに、何よりも憲法9条が現実的な力を持って、その力を発揮してきたし、現に今も力を発揮し続けている。加藤周一氏によれば、「九条は、それ以上踏み出すことを抑えている」。「つまり、特措法をつくらないと海外派兵をできなくしている」し、「その特措法に期限を設けているのも九条による圧力」だと、次のように説明している。

 憲法九条は、戦争と武力の行使を否定していますから、憲法を侵さずに軍隊を海外に派遣することはできない。あえてそれを行うために、特措法、期限を設定した特別措置法をつくっているわけです。しかし、それでもそれは違憲ではないかという問いが、当然、出てくる。いま、その事象そのものの合憲・違憲には立ち入らずに、九条がどこに効いているかということだけを考えると、この「違憲ではないか」というところに効いているのだと思う。違憲であるにしろないにしろ、九条は、それ以上踏み出すことを抑えているのです。つまり、特措法をつくらないと海外派兵をできなくしている。その特措法に期限を設けているのも九条による圧力です。
 改憲運動がねらっているのは、これらの活動、つまり国際社会の要請――すなわちアメリカの要請――であるといわれるこれらの活動を行うために、手枷足枷である九条を変えることです。給油の期限延長だけではなく、心おきなくアフガニスタンの戦争にも、イラクの戦争にも参加できるようにすることです。(加藤周一著「実効性ある行動力を受け継ぐ」『憲法九条、あしたを変える 小田実の志を受けついで』、井上ひさし他著、岩波書店、2008年、P26)

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