古代ギリシャ文明が有名だが、その中でもミレトスが当時大きな力を有していたことまでは知らなかった。 立花隆氏によると、紀元前六世紀のころのミレトスは、古代世界における、「大英帝国や現代のアメリカ」と似たような存在だったと次のように述べている。
この時代のミレトスは、通貨の力をかりて、あちこちに植民市をつくり、その母国として、通商関係の中心に立ち、さらに強大な海軍力をもって、一種の海上帝国を築いていったのである。
当時のミレトスは、十九世紀から二〇世紀にかけてのイギリスが、七つの海に広がる植民地のネットワークと大海軍力の上に大帝国を築き、英ポンドを世界通貨として世界の富をかき集めたのと似たような存在、あるいは現代のアメリカが、ドルの力と軍事力で世界帝国を築いているのと似たような存在に、古代世界でなっていったのである。
このようなミレトスの最盛期のころ、つまり、紀元前六世紀のころと今とでは、当時のミレトス周辺の海岸線は全くちがったものになっている。(『エーゲ 永遠回帰の海』、立花隆著、須田慎太郎写真、書籍情報社、2005年、p251)
それゆえか、世界初が並んでいる。初めての哲学者がターレスで、その弟子アナクシマンドロスは、世界地図を初めて描いている。そして、ヘカタイオスが世界で初めて、現存する本格的な世界地図を描いた。さらにヒッポダモスは、世界最初の都市計画家として知られている。
特筆に値すると思われることは、「このころ、世界ではじめて、本格的な貨幣経済に入った」(上同、p287)ことだろう。それで貨幣まで残っていたのだ。その意義を立花隆氏は次のように評価している。
経済が物々交換経済から、貨幣経済になったということは、人類史の最も大きな曲がり角の一つを曲がったということである。それはインパクトの大きさにおいて、文字の使用開始と同じくらい大きなものを人類に与えたといって過言ではない。
貨幣の導入によって、人類の経済活動は、一挙に何倍にもふくれあがった。貨幣が導入されると、実需以上に貨幣の蓄積という形の富の拡大を目ざす仮需(思惑商取引)が経済活動の新しい主役として登場してくる。それが経済活動を何倍にもふくれあがらせるのである。貨幣は経済活動にさまざまの便宜を与えるが、便宜以上にこの経済活動の拡大作用が大きな意味を持つ。
それは経済世界全体を拡大活性化するが、なかでも貨幣発行を行なう経済主体(国家)に大きな発行益を与え、その国の経済活動を活発化する。それがミレトスに起きたことで、ミレトスの植民市が一挙に百をこすほどにふえていった最大の理由もそこにある。(上同、p287〜289)
私は、ミレトスの存在に驚いたが、それ以上に、 立花隆氏が、紀元前六世紀のころのミレトスを「かつての大英帝国」や「現代のアメリカ」と並んで見せてくれたことで、古代から現在までの大きな歴史の存在と、その本質のようなものを、簡潔に認識することができたこと、その意義が大きかった。
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(「『エーゲ 永遠回帰の海』、283」より) |
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(「『エーゲ 永遠回帰の海』、p 278」より) |
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(「『エーゲ 永遠回帰の海』、p 288」より) |



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