2022年1月30日日曜日

ビックバン以前の宇宙は?

 私たちが住んでいるこの世界(宇宙)は、ビックバンから始まっていまだに膨張し続けていると言われている。それでは、ビックバン以前はどうだったのか、という疑問を抱いている人は、私もそうだが、結構多いのではないだろうか。一般人向けの宇宙論に関する本にも、納得できるような(なるほどと思えるような)答えは見つからなかった。
 しかし、立花隆さんの解説によると、「世界は無から生まれたのではなく、ヒッグス粒子が詰まった真空から生まれたのである。そして実際、真空から物質が生成するということは、高エネルギー素粒子実験の世界では、日常的な現象なのである」。だとすると、ビクバン以前の宇宙は、
ヒッグス粒子が詰まった真空の世界が広がっていたのだろうか。そんな想像ができるようになってきた。
 相対性理論によると、現在既知の物質は宇宙の構成体の一部分でしかなく、宇宙の構成体の多くが暗黒物質(ダークマター)だ、ということはわかっていたが、暗黒物質の正体がヒッグス粒子なのだろうか。いずれにせよ、宇宙空間は「真空で何もない」のではなさそうである。

 最近の数カ月間、高エネ研の素粒子実験をレポートする仕事がつづいているので、この大系でだいぶ勉強させてもらった。一般読者には無縁の内容が大部分だが、次のくだりだけは、ぜひ紹介しておきたい。
 素粒子論は現在、標準理論と呼ばれる形にまとまっているが、そのエッセンスは、驚くべき内容を含んでいる。
「標準理論が新しくもたらした物質観のなかで最も革命的な要素は真空に対する概念であろう。標準理論によれば、真空は何もない無の空間ではなく、物性における媒質のように何か(ヒッグスと呼ぶ)が詰まっている力学的構造体である。したがって真空自身がエネルギーをもつことが可能であり、環境変化に応じて真空自体の性質も変わりうる(中略)、すなわち真空は温度によってその相を変える。標準理論の要諦は、われわれの住む世界が極低温状態にあり、ヒッグス粒子の凝縮したいわば超伝導相状態にあると認識することにある」(『朝倉物理学大系第六巻』長島順清「高エネルギー物理学の発展」)
 ビッグバンで、なぜ何もないところから世界が突然出現することができたのかが、これによって説明される。世界は無から生まれたのではなく、ヒッグス粒子が詰まった真空から生まれたのである。そして実際、真空から物質が生成するということは、高エネルギー素粒子実験の世界では、日常的な現象なのである。素粒子論の最先端は、ほとんどサイババの超能力(もちろんこちらはイカサマ)みたいな話になっているのである。(『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』、立花隆著、文芸春秋、2003年)

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