岸田文雄首相は28日、佐渡金山遺跡(新潟県佐渡市)の世界文化遺産登録を目指し、ユネスコに推薦する考えを表明した。当初は見送りを検討していたが、自民党内から突き上げを食らい、方針転換した形だ。この点に関し、「<視点>人類遺産の理念、政治が翻弄」という、朝日新聞編集委員の中村俊介氏による解説があった。しかし、その内容は、名指しこそ控えたにせよ、「露骨な政治介入によって遺産のOUV(顕著な普遍的価値)がゆがめられることがあってはならない」と、韓国を批判し、対立を助長するものであった。
推薦は決まった。が、来夏の審議まで道のりは険しそうだ。韓国はもちろん、国際社会の反発も予想され、すんなり登録が実現するか予断を許さない。
世界遺産が条約である以上、国際政治から完全に切り離すことは現実的に難しい。しかし、露骨な政治介入によって遺産のOUV(顕著な普遍的価値)がゆがめられることがあってはならない。それは世界遺産制度の根幹を揺るがすことにもなりかねない。(『朝日新聞』』』、2022年1月29日)
それに対し、「政界地獄耳」は、「歴史認識の相違が拡大 かみ合わない日中、日韓」というコラムを書いて、アウシュヴィッツ・ビルケナウ絶滅強制収容所というドイツの負の遺産に対するドイツとイスラエルの例を挙げながら、歴史認識の違いを「ドイツとイスラエルのように共同で乗り越えることはできないものだろうか」と、問題提起している。政府におもねない心地よい姿勢に拍手喝采である。朝日新聞には見習ってもらいたいものである。
歴史認識と言えば、ドイツのワイツゼッカー元大統領の有名な言葉「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです」(ヴァイツゼッカー『荒れ野の40年』岩波書店、1986年、p16)を思い出す。それに比べて、岸田文雄首相の姿勢を恥ずかしく思う。
なお、日刊スポーツの社会コラムはネットで全文公開されているので、全文紹介しておく。
★「第二次世界大戦中に命を落とした約600万人のユダヤ人と、ナチス・ドイツの強制収容所に閉じ込められ、生還することのなかったユダヤ人、ポーランド人、ロマの人々。1942年の春に始まったアウシュヴィッツ・ビルケナウ絶滅強制収容所が解放されて77年を迎えます」とポーランド広報文化センターは伝える。20日、国連総会はホロコーストを否定・歪曲を非難する決議を193カ国の賛成で決議したが、この決議実現を主導したのは加害国であるドイツ。被害者であるイスラエルに声をかけ共同で提案した。
★1月27日はアウシュヴィッツ強制収容所がソ連軍によって解放された日で、国連は21日から27日までをホロコースト犠牲者を想起する国際デーとしてホロコーストの歴史と遺産に焦点を当てこの悲劇を忘れることなく、負の歴史を繰り返さぬよう、共に考え平和を構築することを考える日としている。国連やドイツが危惧する背景には米国をはじめ世界各国で「ホロコーストはなかった」とか「陰謀論」が繰り広げられ、歴史を無視し、人権を軽視し差別を助長する動きが拡大しているからだ。
★日本政府は1度は見送った佐渡金山遺跡のユネスコ世界記憶遺産登録申請を閣議決定する。韓国の反発は必至だ。その後両国で登録を巡り平行線になるのは明らかだが、ドイツとイスラエルのように共同で乗り越えることはできないものだろうか。日中、日韓関係が進まないのはいずれも歴史認識の相違が拡大してのことばかりだ。一時は共通の歴史研究などの議論も進んだが、加害者と被害者の理屈がそもそもかみ合わない。ドイツとイスラエル、そして国連は戦後80年を迎える前に大きく前進したが、東アジアでは無理な相談だろうか。(K)※敬称略(「歴史認識の相違が拡大 かみ合わない日中、日韓」より全文引用)
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