2021年6月7日月曜日

戦争の背後にあるもの

 県立美術館で、「個としての人間を全否定する旧日本軍隊」で紹介した浜田知明の作品「初年兵袁歌・歩哨」に出会ってきた。解説目録に彼の手記も紹介されていて、そこで初めて、「戦場で考えたことを絵にしてみたい」という浜田知明の絵心が、彼を頭から離れなかった自殺から救ってくれたことを知った。

 僕はもう昼間は命令のままに、投げやりに適当に動き廻っている一個の人形に過ぎなかった。絶えず死と対峙して何時自分の咽喉に銃口を当てがうかを考えて生きていた。僕を死から救ったものは夜である。太古の色を湛えて果てしなくひろがる黄土地帯の上、あくまで深く澄んだ夜のとばりの中に、煌々と輝く満天の星であった。ただ一人歩哨に立って星と語った。 (中略)自分がこの野蛮な日本の軍隊の一員であることが淋しかった。いつの日かこの社会から解放されてアトリエに戻ることがあったら、戦場で考えたことを絵にして見たい。ただこのことだけが、自分を自殺ら救った。

 そして、図録の中に、「取引」(1979年)という戦争の本質を見事に描き出した作品を見つけた。戦争の口実を、安全保障とか、国を守るためにという美名でもって語っているが、「取引」は、戦争の背後にあるもの、見事に描き出している、といえよう。

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