最近、また「書」に関心を持ち始めた。「所作を丁寧にするだけで、人生は豊かになる」という書道家・ 武田双雲さんの言葉に心を動かされたからだ。
図書館で武田双雲さんの本を検索したら、いろんな本を書かれていて驚いた。『「書」を書く愉しみ』(光文社新書、2004年)ならわかるが、『上機嫌のすすめ』(平凡社新書、2010年)というような本まであった。本の紹介記事には、「大企業のサラリーマンを経て、路上アーティストになったという異色の経歴を持つ書家・武田双雲。自身の歩んできた人生から、上機嫌で生きることの素晴らしさと大切さを提唱する」とあった。そのうちに読んでみたい。
僕は書道教室の生徒さんに「丁寧」に書くように伝えています。丁寧と言っても、ただゆっくり書けばよいということではありません。丁寧とは漢字のとおり、寧の心。安らかな心でないと丁寧とは言えません。上手いとか下手とかにとらわれていは、心は安らかではありません。比較や評価の心はどこかに置いて、墨の美しさや香り、筆の毛の動きのこまやかさ、紙から返ってくる感触、それらをしっかりと感じること。それが、 心が整っていることなのです。
しかし、人は早く上手くなりたいとか、失敗するのがやだ、褒められたいという気持ちもあって、「今」を味わうことなく、未来への不安 や対策にとらわれがちです。これが忙しくなる原因となります。
丁寧にやると遅くなるイメージがありますが、実は速い。心が安定しているので動きに無駄が生まれにくく、ミスも起こりにくい。ノイズがないので、問題になるようなことを引き寄せないため、速いのです。結果として所作も美しくなるので、それに呼応するように筆や墨も共鳴してくれます。
これは書道の世界だけでなく日常のあらゆることすべてに応用できます。起きる、着替える、顔を洗う、食べるなどの所作が丁寧になると、生活が豊かになり、体も心も円滑になっていき、人間関係も円滑になります。ひとつひとつの所作を丁寧にするだけで人生は豊かになっていくのだと実感しています。(『NHKきょうの健康』、1916年2月号)
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