過剰なストレスが体を蝕むことは、常識と言えるほどに知られていることではないだろうか。がんといえども例外ではなく、その発生原因としてストレスが関わっていることが知られている。
とはいえ、そうした認識は漠然としたもので、その仕組み、発症の過程などまでは知られていない、常識的認識にまでは至っていないと思う。そこで、わかりやすい解説を見つけたので紹介する。アップル創業者のスティーブ・ジョブズなど、働き盛りのさなかに、がんに侵されて惜しまれて亡くなった人たちに共通する背景として、「極度のストレスにさらされつつ、そこから逃げることが決して許されなかった」ことを挙げ、次のように解説している。
生命の緊急時、ストレスホルモンは免疫システムが使っていたエネルギーや栄養を、ストレスと戦うための他の緊急システム(心臓、筋肉、呼吸、知覚など)に振り向けるようなスイッチとなる。つまりストレスホルモンは免疫抑制剤なのである。免疫システムは身体全体の防衛網。 国家にとって防衛費が膨大なものになるように、平時、免疫システムには、かなり多くの生命リソース(つまり酸素や栄養)がその維持管理のために振り向けられている。しつこい皮膚のかゆみやアレルギーにしばしばステロイド軟膏が使われる。これは、かゆみやアレルギー反応を引き起こす過剰な免疫反応を抑制するためである。交感神経系の活性化も同時に、免疫システムを抑制する方向に働く。さて、問題はこのあとだ。ストレス応答は本来、一過性の防御反応である。敵からなんとか逃げおおせるか、危険な状況から脱することができれば、ストレスホルモンのレベルは下がり、交感神経系の活性化もおさまり、身体はもとに戻る。生命リソースは再び免疫システムにふりむられ、防衛網は再活性化される。これが進化の長い歴史で生命が結験してきたストレスとの付き合い方だ。あくまでストレスは一時的なものだった。ところが、現代人はさまざまな社会的・人間的なストレス環境に置かれる。しかもこれは一過性とはいかない。むしろ恒常的だ。逃げられない。ゆえに、慢性的なストレス反応が、免疫、システムをたえずいためつけてしまう。免疫システムの抑制は、がんに対する警戒網を弱める。かくしてストレスとがんが結びつく。ゆえに、がんになりたくなければ、できるだけストレスホルモンの上昇を避け、交感神経系を刺激しないようにするのがよい。それがハカセの推奨する迷走生活である。(『迷走生活の方法』、福岡伸一著、文藝春秋、2021年、p116〜117、下線は引用者による)
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