2020年7月7日火曜日

不気味な奴隷船の絵画

 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー「奴隷船」(1840年、ボストン美術館蔵)という絵を初めて知った。朝日新聞夕刊(2020年7月7日)で高階秀爾(美術史家・美術評論家さんが紹介していたのである。解説記事を読んでも、よくわからなかったが、拡大してみてみるとよくわかった。海に投げ出された支隊の断片と、それらに群がる魚も描かれ、この絵の力と、画家ターナーの偉大さがよくわかった。

「画面には死者を海に投げ棄てる場面など、まったく描かれていない。それどころか、奴隷船自体ははるか遠く波間に隠されていて、乗組員の姿などまるで見られない。これでは奴隷たちの海中投棄という作品本来の内容は、まったく伝わらないであろう。それを伝えるために、ターナーは卓抜なやり方を用いた。彼が、黄、赤、オレンジの多彩な輝きを見せる太陽の光輝を反映したエメラルド・グリーンや青紫の複雑な色合いの海面の、うねるような白い波浪のあいだに、鎖をつけたままの片脚が突き出しているのを特に目立つように描き出したのは、そのためである。この不気味な肉体の断片の存在によって、壮麗な色彩の饗宴(きょうえん)と見えた画面が、いっきょに不吉な死の影に覆われる。その影が、まるで隠し味のように作品の色彩効果を高めている点に、画家ターナーの偉大さをうかがうことができるだろう」(高階秀爾)。

 アメリカで最近起きだ暴動には、こうした歴史的時代背景があることも忘れてはならない、と思う。 

 カタログに自作の詩集『希望の挫折』(未完)からの七行詩を書き記したという。

  総員甲板へ、中檣(ちゅうしょう)を倒して固定せよ
  怒りに燃えるあの太陽と脅かすように広がる雲とが
  台風の襲来を告げる。
  台風に襲われる前に、死んだ者も構わず
  皆海へ投げ捨てよ、鎖もつけたまま
  希望、希望、偽りの希望よ!
  お前の市場は今やどこにあるのか?

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