現実国家の行動態度の混迷する時、国家の理想を思い、現実国家の狂する時、理想の国家を思う。これは現実よりの逃避ではなく、かえって現実に対してもっとも力強き批判的接近をなすために必要なる飛躍である。
現実批判のためには現実の中にいなければならないが、現実に執著する者は現実を批判するを得ない。すなわち現実によりて現実を批判することは出来ないのである。現実を批判するものは理想である。あたかも地上物件を爆撃するためには飛行機が離陸しなければならないごとく、また敵の飛行機を打ち落すためにはそれよりもさらに高く飛び上ることが必要であるごとく、現実を批判し指導するためには理想を明らかにし、理想の世界に足場を据えればならない。理想の高度の高さほど、現実批判は力たり得るのである。(「国家の理想」『矢内原忠雄全集 第18巻 時論 1』、矢内原忠雄著、岩波書店、1952年、p137、強調は引用者による)
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