2020年7月30日木曜日

敵対関係ではなく、ライバル関係を!

 北朝鮮が核に固執し、度重なるミサイル実験を行ってきた背景に、巨大な日韓米国の軍事力に包囲され、「窮鼠猫を嚙む」にならざるを得ない、がある、と思ってきた。このことを金大中氏は、「北朝鮮が高姿勢に出て、こけおどしをするのも弱者の強迫観念から」(『朝鮮半島と日本の未来』、p205)と表現していた。至言である。だからこそ、朝鮮半島と日本の未来にとって大切なことは、「敵愾心と憎悪を煽るような対決型の政治」(同)では決してない。金氏が言うような敵対関係ではなく、良きライバル関係なのである。

 金氏は、南北首脳会談で今度は北の独裁者と対面を果たすことができたのである。誰よりも独裁者を憎みながら、敵ではなく、ライバルとしての関係を築こうとした金大中氏。彼の「太陽政策」の根底にあったのは、何か何でも戦争を避けたい、もう二度とあの内戦のようなことを繰り返してはならないという不退転の決意ではなかっただろうか。
 北朝鮮内の人権抑圧や弾圧など、由々しい問題を軽視することはできない。また、安保理決議を歯牙にもかけず、ミサイルなどの実戦配備や発射を繰り返す北朝鮮の振る舞いは言語道断だ。しかし、それでも粘り強く狭い回廊を歩み、そして平和の広場に出る。これが「太陽政策」の眼目であり、金氏のレガシーは確実に今も引き継がれていると言える。
 本書は、ある意味で金大中氏との出会いを通じて得られた「太陽政策」を、私の知見と私なりの言葉で語り直そうとする試みでもある。
 新型コロナウイルスが世界を揺るがし、世界恐慌すら危惧される現在、もはや敵愾心と憎悪を煽るような対決型の政治には自滅の近しかないことは明らかである。その意味では「太陽政策」が今こそ、現実味を帯びて私たちの前に朝鮮半島と日本の未来を考える選択肢として浮上しつつあると言える。「北朝鮮が高姿勢に出て、こけおどしをするのも弱者の強迫観念からだ。説得し、背中を軽くトントンとたたき、なでさすってやるべきだ」(『金大中自伝II』)。この金大中氏の言葉をいま一度噛みしめるべきではないだろうか。(『朝鮮半島と日本の未来』、姜尚中著、集英社新書、p204〜205)

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