2023年12月25日月曜日

新たな「戦後神話」の実態は?

 戦後民主主義について、否定的な見方があって気になっていました。丸山眞男も、同じ思いを抱いていました。例えば、

 最近の議論で私に気になるのは、(中略)戦後についての、十分な吟味を欠いたイメージが沈殿し、新たな「戦後神話」が生れていることである。政界・財界・官界から論壇に至るまで、のどもと過ぎて熱さを忘れた人々、もしくは忘れることに利益をもつ人々によって放送されるこうした神話(たとえば戦後民主主義を「占領民主主義」の名において一括して「虚妄」とする言説)は、戦争と戦争直後の精神的空気を直接に経験しない世代の増加とともに、存外無批判的に受容される可能性がある。こうした過去の忘却の上に生い立つ、戦後思想史の神話化を防ぐ一つの方法は、戦後にさまざまの領域で発言した知識人ができるだけ多く、自らの過去の言説を、資料として社会の眼にさらすことであろう。それは旧版の後記にのべた戦後責任という道義的問題だけでなしに、ヨリ綿密な実証的吟味を経た戦後史を作るという私たちの学問的課題のためである。(『丸山眞男集9巻』)

 丸山が心配した「戦後思想史の神話化」は、すでに出来上がっているかもしれません。それでも、その神格化の実態を明らかにし、かつ、「ヨリ綿密な実証的吟味を経た戦後史を作る」ことが求められているようです。それはまた、次の引用にもあるように、丸山がやろうとしたことでもあったようです。

 複雑で多義的で、さまざまな方向への可能性が同時に含まれている「戦後」の状況の中で、何がほんとうに選びとられるべき道なのか、何が本当に「賭ける」に値する道なのかを、文字通り全身全霊を注いで、考え抜こうとしたところに、丸山真男の独自の文章と、発言とが紡ぎ出されていったのです。(『丸山眞男『日本の思想』精読』、宮村治雄著、岩波書店、p8)

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