2023年12月19日火曜日

大国は多くはみなバカであります

 中江兆民の『三酔人経綸問答』のことは「兵隊は市民となって・・・・」と「最高形態としての民主制」で取り上げましたが、洋学紳士君は、さらに熱弁を振います。
「十九世紀のこんにち、武力で威嚇することを国の栄誉とし、侵略を国の方針とし、他国の領土を奪い他国の民を殺して、どうしても地球の所有者になろうと考える国は、まさに狂気の国です。
 もう一言申し上げると
 地球上の大国は多くはみなバカであります。地球上の強国の多くはみな臆病でたがいに恐れると同時に強がって兵隊を集め、軍艦をつらねてかえって身を危険にさらしている。弱小の諸国は、なぜ自発的に兵隊を撤廃し、軍艦を手ばなして安全をはからないのでしょうか」(「100分de名著 中江兆民“三酔人経綸問答”・2」より)
 どうでしょうか。「地球上の強国の多くは、・・・・強がって兵隊を集め、軍艦をつらねてかえって身を危険にさらしている」という予想は、どうだったでしょうか。私は、その通りになって、これまで多くの戦死者を出してきました。それに対して日本は、自衛隊はあるものの、憲法九条の縛りの効果があって、戦後戦死者を出しておりません。しかし、多くの人たちは、洋学紳士君は理想主義者であると言って馬鹿にしたりしております。『三酔人経綸問答』でも、豪傑君が反論します。
 豪傑君「紳士君の言うことは、いかにも学者らしい。学者の言うことは本には著わせるがとても実行はできません。それならば、もし凶暴な国があって、わが国が軍備を撤廃するのに乗じて、軍隊を送って来襲してきたらどうしますか」

 洋学紳士君「願わくは、一ふりの剣も一発の弾丸もたずさえず、われわれはしずかにこう言いましょう。なたがたがやって来て、われわれの国を乱すことを望まない。一日も早く立ち去って国に帰りなさい、と」

 豪傑君「まさか、これほどとは思いませんでした。哲学が人の心をおおいつくして、ものを見えなくしてしまうことが。
 紳士君が数時間にわたって熱弁をふるい、世界の情勢を論じ、政治の歴史を語ったあげく最後の一手とは結局、全国民が手をこまねいて敵の弾丸に倒れて有終の美を飾るというのですからね」(上同)
 洋学紳士君の最後の一手には、私も無理があると思います。ではどうすればいいのかといえば、私は、全力を上げて、攻められない国つくりをすればいいと考えています。ですが、最後の一手までの議論は、まさに未来を先取りした思想であることは間違いありません。この思想こそ、立花隆さんのいう「未来のスピアヘッド(槍の穂先)」ではないでしょうか。つまり、「どのような未来にしろ、未来は、未来のある日突然はじまるものではない。近未来なら、未来は必ず現在に接続しており、現在の中に、未来のスピアヘッド(槍の穂先)が突き刺さっている部分があるものなの」(「20世紀知の爆発」『21世紀 知の挑戦』、立花隆著、文藝春秋、2000年、p 8)です。
 

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