著者が「この執拗な推敲」と表現した句もありました。「吹とばす石はあさまの野分哉」ですが、この句について、次のように述べています。
この執拗な推敲が芭蕉の身上である。最初の句から「石」はもちいられているのだが、それを石の表現として、その持つ巨大な力として定着しなくては、独創的な表現にならない。岩という不動のものを「重力に反して」飛び上がらせるところに自然の力と相乗りする表現の力がある。それが句作の醍醐味である。(『わたしの芭蕉』、加賀乙彦著、講談社、2020年、p11)
推敲の過程は次の通りでした。
「秋風や石吹颪(おろ)すあさま山」」 → 「吹颪あさまは石の野分哉」 → 「吹落あさまは石の野分哉」 → 「吹とばす石はあさまの野分哉」
四句をこうして眺めてみると、あさま山野風ばかりが際立っているのに対し、四句目は、あさま山の噴火のエネルギーが見事に表現された秀句になっているのがわかります。納得するまで執拗に推敲を重ねる姿勢は、是非ともあやかりたいものです。これからも文章を書き続けたいと思っているからです。
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