9・1後、「銃の売り上げが右肩上がりに上昇、国会では巨額の軍事予算が、満場一致で承認」されたそうですが、ウクライナ戦争後に「世界の国々で軍事費が増額」されたのも、9・1後と同じ現象ではないでしょうか。
9・1を思い出すたびに、記憶のフタがゆっくり開き、現れるのは、別のものなのです。
あの日体験した地獄より、もっとずっと怖い世界。
飛行機をハイジャックして、ナイフ一本で無慈悲に3000人を殺したテロリストよりも、さらに邪悪な者たちが存在すること。
それを最初に目の当たりにしたのは、テロの翌日、9月12日の朝でした。
恐怖と怒りでパニックになった人々の憎悪が、突然現れたテロリストという敵に向かって、凄まじい勢いで吹き出していたのです。
朝起きて通りに出ると、鮮やかな赤と青が目に飛び込んできました。
家々の門や窓にびっしりと貼られた星条旗(p18)
少し開いた窓の隙間から、アメリカの国歌「星条旗」が流れていました。
道行くバスや車にも星条旗がはためき、スーパーや量販店ではプラスチックの国旗が半日で完売、テレビをつけるとブッシュ大統領が拳を振り上げ、こちらに向かって力強くこう言います。
「アメリカは負けない、テロリストになど屈しない。我々は一丸となって、この戦争に必ず勝利する」
バス停でも電車の中でも、会社の休憩室でも、人々の話題はテロとの戦争でもちきりでした。次のテロはいつ、どこに来るのだろう? 自分と家族を守るには、どんな武器を準備すべきだろう?
この頃、多くの主婦たちが、チェーンの大型スーパーで銃を買い、州兵の訓練所に撃ち方を習いに行ったのです。
家族の人数分だけ銃を買ったというアパートの隣人は、一人暮らしの私を心配し、熱心にこう勧めてくれました。
「ベッドサイドの引き出しに入れときなさい。テロリストが入ってきたとき、すぐ出せるようにね」(p19)
(寝るときに、頭のそばに銃ですか⋯⋯。むしろそっちのほうが、怖くて安眠できそうにありません)
やはり、武器で自衛する国民の権利が憲法にまで書かれている国は違います。エレベーターで会うたびに、何度も念押しされました。
「一番上の引き出しに入れてね、聖書の横よ」
無理もありません。テレビ、ラジオ、新聞では毎日のように、「正体のわからない危険なテロリスト」「国内すべての地域が次のテロのターゲットになる可能性」など、恐怖を煽る報道ばかりが流されていたのですから。
武器というのは不思議なもので、増やせば増やすほど不安が大きくなるのです。
恐怖が国全体を雨雲のように覆っていき、銃の売り上げが右肩上がりに上昇、国会では巨額の軍事予算が、満場一致で承認されていきました。(『堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法』、堤未果著、幻冬舎、2023年、p18~20,、強調は著者による)
どうでしょうか。私はこの中の「武器というのは不思議なもので、増やせば増やすほど不安が大きくなる」は真実であり、名言だと思いました。やはり、さらなる戦火の拡大が危惧される今こそ、日本国憲法の真価を学び合う必要がるのではないでしょうか。
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、(この)政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ(「日本国憲法前文」より)
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