2023年10月29日日曜日

破綻した抑止力理論

 出版文化の質が低下しているのでしょうか。そう思わせられた本に出会いました。『13歳からの日米安保条約 戦争と同盟の世界史の中で考える』(松竹伸幸著、かもがわ出版、2021年)です。なぜでしょうか。
 次のように、「あとがき」で「日米安保を考える上では、そういう多様な見方が必要だ」と言いながら、核兵器は「ただ保管しておくのではなく常に発射できるような状態におき、訓練もくり返さなければなりません」「敵の核保有国から攻撃されればひとたまりもない状態であり、他方では、仲間の核保有国に全面的に頼るしかない状態です」と、現状の安保容認の主張をはっきりと述べているのです。多様な見方というなら、安保条約は憲法違反という主張も、詳しく解説されるべきですが、それもないようです。つまり、記述に一貫性がないのです。

 安保条約をめぐる私の基本的な立場に変化があるわけではありませんが、本書では、ただ結論めいたことを書くようなことはしていません。どんな立場にも根拠があるし、根拠がなくなれば立場が変化することもあるという見地で、いろいろな見方を取り上げています。日米安保を考える上では、そういう多様な見方が必要だというのが、私がようやく到達した考え方です。本書が日米安保を真剣に考えてみたいと思っている方々に少しでも役に立つことがあれば、筆者としては望外の幸せです。(p158)

 抑止力とはこちらから先に手を出すのではなく、手を出さない状態で相手に侵略を止めさせようとするものであり、その点では何がなんでも攻撃を仕掛けるというものではありません。しかし、だからこそ自分が保有する核兵器の威力は、実際に使わなくても相手を震え上がらせるものでなくてはなりません。また、「耐え難い損害を被ることになる」と相手を恐怖させるためには、実際に使う場合があることを「明白にさせる」必要があり、常に発射できるような状態におき、訓練もくり返さなければなりません。そうでないと相手が核兵器で攻撃されるという恐怖を感じることはないからです。
(中略)
 こうして核兵器を持たない国にとって見れば、東西両陣営のどちらに属しているのであれ、第二次大戦前には経験したことのない事態が生み出されます。一方では、敵の核保有国から攻撃されればひとたまりもない状態であり、他方では、仲間の核保有国に全面的に頼るしかない状態です。(p41〜42)

 最近の傾向を鑑みても、すでに抑止力理論は破綻していると言って良いでしょう。 戦争の火種が止まず、空爆やミサイル攻撃がいまだに続いているからです。多様な見方というならば、抑止力理論が破綻しているという考えも、合わせて紹介すべきだと思うのです。
 そんな中でも、幾らかの救いがありました。「第三章 日米安保条約の未来を占う」の最後にで「日米安保や抑止力に替わる選択肢も視野に入れておかねばなりません」(p155)と言っていることです。それにしても、私に言わせれば不十分です。できるだけ早く日米安保条約は廃棄して、日本国憲法に則った外交戦略を持つべきだからです。それこそが世界に繰り広げられている戦火を繰り広げられている戦火を鎮める方法だと思います。

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