岡倉天心に『茶の本』という著作があります。茶道の本のようですが徹底的な平和論まで言及していることを知りました。軍事力に訴えることをもって「文明国」と呼ばれるというなら、いつまでも野蛮国に甘んじて、「わが芸術および理想に対して、しかるべき尊敬が払われる時期が来るのを喜んで待とう」というのです。これは徹底的な非戦論です。日本国憲法を先取りしているということもできます。若松英輔さんによる紹介文を読んでみましょう。
西洋はかつて東洋を野蛮な国だと語っていたが、日本が軍事力に訴えるようになったら「文明国」と呼ぶようになった、と述べ、こう続けている。
「もしわれわれが文明国たるためには、血なまぐさい戦争の名誉によらなければならないとするならば、むしろいつまでも野蛮国に甘んじよう。われわれはわが芸術および理想に対して、しかるべき尊敬が払われる時期が来るのを喜んで待とう。」(村岡博訳)
天心の思想はまったく古びていない。それどころか、芸術と理想が軽んじられ、再び貧しい「文明国」になろうとする日本に生きる私たちが、今まさに読み返してよい現代の古典である。(若松英輔著「花について〜岡倉天心『茶の本』」日本経済新聞、2023年10月14日)
今でこそ、トーンが弱まってきているように見えますが、改憲論を推し進めたいことに変わりはないでしょう。現実の方が、ますます理想から遠ざかってきているからです。理想が軽んじられている証拠です。こんな時だからこそ必要な、バックボーンに相応しい思想こそ、天心の思想なのかもしれません。
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