日本国憲法の構造について関心を抱いてきた。ようやく、すっきりした、納得できた解説に出会った。それは、『高校生からわかる日本国憲法の論点』(伊藤真著、トランスビュー、2005年)にあった。憲法における重要な条文、つまり本文の柱は、「人権」と「統治機構」であり、とくに重要なのは人権規定のほうだと述べ、その人権保障の前提が、一章「天皇」と二章「戦争の放棄」だというのである。つまり、次の引用文のように、「二つの前提がそろったところで、はじめて国民の人権が保障される」のである。
憲法の本文を見ていくことにしましょう。本文の柱は「人権」と「統治機構」であり、とくに重要なのは人権規定のほうだと述べましたが、本文ではそれが最初に置かれているわけではありません。「国民の権利及び義務」は第三章で、その前に「天皇」(第一章)と「戦争の放棄」(第二章)が置かれています。なぜ憲法制定の主目的である人権保障が、最初に出てこないのでしょうか。しかし、そう簡単でないことも事実であろう。戦前の人権抑圧事例からも分かるように、人権保障が平和主義や国民主権の前提になっている側面もあるからだ。
これは、明治憲法時代の反省からなされたことだと考えられます。戦前の日本では、憲法に人権規定はあったものの、あまり守られていませんでした。天皇という君主に強大な権力が与えられていたことと、軍部の暴走に歯止めをかけられなかったことがおもな理由です。そこで新しい憲法では、第一章で天皇の権力に歯止めをかけ、続く第二章で軍事力に歯止めをかけました。この二つの前提がそろったところで、はじめて国民の人権が保障される、いう意味がこめられているのです。ですから、人権規定が後ろのほうにあるのは、それを軽視したからではなく、むしろその重要性を強く意識した結果といえます。(上同、p74)
今、ウクライナにおける戦闘を前にして、軍事費の大幅増が現実味をおびてきている。パイが同じなら、人権に関わる経費が抑圧されるであろうことは必至である。このことからも、平和主義が人権保障の前提であることがよくわかる。憲法の三原則の相互関係が重要な所以である。
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