2023年4月17日月曜日

憲法改正限界説の正当性

 憲法改正には限界説というものがある。「日本の代表的な憲法体系書」(『岩波講座憲法・2』)『憲法』(芦部信喜著、岩波書店、2002年)によれば、「法的な限界が存するとする説が通説であり、かつ、それが妥当と解される」(p366-367)としながらも、「国際平和の原理も、改正権の範囲外にあると考えなくてはならない。もっとも、それは、戦力不保持を定める。。九条二項の改正まで理論上不可能である、ということを意味するわけではない(現在の国際情勢で軍隊の保有は直ちに平和主義の否定につながらないから)、と解するのが通説である」(p367)と、実質、限界説を否定してしまっている。
 しかし、日本国憲法の三原則の改正を認めない、しかも理路整然とした憲法改正の限界説を見つけることができた。
 憲法の改正は、憲法を廃止して新憲法を制定し、憲法の全面的変更を行うことと、固より同義でない。こうして、憲法の廃止若しくは変更と異る意味のかかる憲法の改正には、一定の限界がある。即ち、憲法の改正においては、現行憲法の成立及び存続の根底をなすその根本精神を破壊してはならない限界がある。
 かくして、日本国憲法にあっても、国民主権の原則、基本的人権の尊重、平和国家の建設などの原則を変更することは、日本国憲法第九十六条の予見する改正からは除外されねばならない。現に、日本国憲法前文は、国民主権の原理に反する一切の憲法を排除するから、現行憲法を廃止しない限り、国民主権の原理に反する憲法は存在し得ない。
 又、日本国民は日本国憲法によって恒久の平和を念願し、国際紛争解決の手段としての戦争を永久に放棄したのであり、又、国民の基本的人権は日本国憲法によって永久に侵されない権利として保障せられる。従って、現行憲法を廃止しない限り、徹底的な平和主義に反する憲法、国民の基本的人権を蹂躙する憲法は存在することを得ない。
 かくして、これらの原則は、現行憲法を存続させながら、それの改正としてこれを変更することを得ないのである。他面、これら根本原則の変更にふれない条項の改正は、常に第九十六条の改正手続を以て行なわれなければならない。かかる改正手続によらないで、これら条項の效力を停止し、又は、それと異りたる処置をとることは、改正ではなくして、非合法的な憲法の破棄である。蓋し、日本国憲法には、旧憲法第三十一条におけるが如く、憲法そのものにかかる非常処置を認めた規定を欠くからである。(『日本国憲法要論』、渡辺宗太郎著、有斐閣、1954年、p92-93、旧漢字を改めたり、改行を加え読みやすくしてある)
 この短い文章の中に、くどいほど、限界説の内容を説明している。
・憲法の改正においては、現行憲法の成立及び存続の根底をなすその根本精神を破壊してはならない限界がある。
国民主権の原則、基本的人権の尊重、平和国家の建設などの原則を変更することは、日本国憲法第九十六条の予見する改正からは除外されなければならない
・徹底的な平和主義に反する憲法、国民の基本的人権を蹂躙する憲法は存在することを得ない
これらの原則は、現行憲法を存続させながら、それの改正としてこれを変更することを得ないのである。

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