現実を見よ、といって、軍事力を拡大し、核兵器を手放そうとしない人たちに言いたい。「どちらもが確実に死に絶えるとわかっていて核戦争を始める」ことがどういうことなのか、よく現実を見よ、と。
フルシチョフは核戦争の恐怖について語り、少しでも可能性があるならそれを避けるのが二大国の指導者の義務ではないかと率直に語りかける手紙だった。
「私はふたつの戦争に参加してきた。いったん始まれば、戦争というものは村や町の中を猛進し、あらゆる場所に死と破壊をまき散らすまで終わらないことを知っている」と彼はケネディに語りかけた。どちらもが確実に死に絶えるとわかっていて核戦争を始めるのは、狂人か自殺志願者のすることだ。だから「ふたつの異なる社会=政治制度をもつ国が平和に共存することを考えよう」と呼びかけ、単純な交換条件――ソ連がミサイル基地を撤去するかわりに、アメリカはキューバ侵攻をしないと約束すること――を提案した。
「親愛なる大統領、私たちとあなたたちは、戦争というものの周囲に巻かれたロープの両端を引っぱりあうことをやめなければなりません。両端を強く引っぱれば引っぱるほと、結び目が固くなってほどけなくなってしまいます⋯⋯結び目を固くして核戦争を起こし世界を滅ぼすつもりがないのなら、ロープの両端を引く力をゆるめ、美しい結び目を作りましょう。私たちにはそれができると思います」とフルシチョフは手紙を締めくくった。
アメリカ情報部が本物だと判断したその手紙の内容は、読む者に信じたいと思わせるものだった。しかしそれに続く数時間のあいだにも緊張はさらに高まっていったので、ケネディが返信を書いたのは翌日の夜だった。世界は破滅の寸前だった。(『世界を変えた100の手紙・下・ライト兄弟からタイタニック号の乗客、スノーデンまで』、コリン・ソルター著、原書房、2023年、p124)
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