1466年にオランダに生まれ、オランダの紙幣の肖像画にもなったエラスムスという人物のことを初めて知った。「彼は西洋のすべての作家文人の中にあって、最初の自覚せるヨーロッパ人であり、最初の戦闘的な平和の友であり、ヒューマニストの理想の、世界と精神とに友愛的なる理想の、最も雄弁なる代弁者であったということである。そしてまた、彼がわれわれの精神世界をもっと正しく理解あるものに形成せんとする戦において遂に敗北者となり終ったという、この彼の悲劇的な運命こそ、かえって密接に彼をわれわれの同志的な感情に結びつけるものであるということである」(『エラスムス』、ステファン・ツワイク著、池田薫訳、1936年)。
ツワイクのいうとおり、エラスムスは私たちの愛する多くのものを愛した。詩と哲学、書籍と美術品、いろいろの言語と民族、そしてそれらの間に区別を設けず、もっと文明を高めるという目的のために、全人類を愛した。彼は善意と寛容を尊重した。そして、狂信を理性の敵として最も憎んだ。ところが、不幸にして、時代の進展はこのような考え方、そしてまた、このような考え方の上にたった生き方を、ほとんど不可能なものにしてしまった。『本の中の世界』、湯川秀樹著、みすず書房、2005年。p109〜110)
「エラスムスは私たちの愛する多くのものを愛した。詩と哲学、書籍と美術品、いろいろの言語と民族、そしてそれらの間に区別を設けず、もっと文明を高めるという目的のために、全人類を愛した。彼は善意と寛容を尊重した。そして、狂信を理性の敵として最も憎んだ」。なんと素敵な表現であろうか。しかし、戦前、戦中の日本は狂信そのものであったが、いまだに世界で狂信が跋扈している。エラスムスの精神を呼び起こし、狂信に対抗すべきなのかもしれない。
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