仙崖の『鏡餅と鼠図』の意味するところがわからなかった。しかし、中山さんの解説を読み、親鸞の有名な言葉「善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」に通じるところのある傑作ではないか、と思えるようになってきた。
同時に、人間中心に陥ることのない優しい命への眼差しが溢れた傑作でもある。そういう意味では、西洋の画題にはない、日本独特のものなのかもしれない。
正月の鏡餅をネズミのカップルが盗んでいくところを描いた作品だ。鏡餅を盗むネズミはに憎いだろう。しかし仙厓は、ネズミが盗んで行くことこそめでたいのだと賛文に書く。善と悪、苦と楽、幸と不幸。二元論で考えがちだが、そもそも生きる喜びとは何かといった頭で考えると、なかなか答えの見つからない命題に対して、相対的な価値にとらわれてはいけないとほほえましい戯画に託して民衆の心に訴えかけているのだ。この作品は類似の図柄のない傑作である。(中山喜一郎著、『永青文庫』、2016年、No.96、p 11〜12)

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