2022年9月10日土曜日

日常が突然断ち切られる悲劇

 ニューヨークを拠点とする美術家・蔦谷楽(つたやがく)のことは、日本経済新聞(2022年9月10日)のアートレビュー<蔦谷楽展 核問題を今に問う現代の「鳥獣人物戯画」>で、初めて知った。日米で核の歴史を綿密に調査し、絵画や映像作品として発表しているが、この度、原爆の図丸木美術館(埼玉県東松山市)で蔦谷楽展を開催中だという。
 蔦谷楽が核問題に関心を持ったのが、「15年に父親が東日本大震災の被災地に土木技術者として赴任したのがきっかけだった。ともすれば忘れそうだった被災地の状況を、父親が日々伝えてくる。『何も復興していないじゃないか』。福島について調べ始め、やがてマンハッタン計画にも視野を広げた。
『日本にも米国にも核の被害者はいる。彼らは時の権力者によって情報を隠され、大きな被害に苦しむ。いつの時代も、どこの場所でも、構造は同じだ』
と蔦谷。憤りを直接表現するのではなく、動物や昆虫の姿を借りることで、核問題に興味がない人も関心を持ちやすいよう工夫した」(日本経済新聞、2022年9月10日、強調は引用者による)という。
 真珠湾攻撃の直後に米国でスパイ容疑をかけられ、強制収容された日系1世の物語も作品として登場しているようだが、このような突然訪れる悲劇は、「残念なことに今もなお、ありふれた日常が突然断ち切られる悲劇は世界各地で起きている」(上同)という指摘には、ウクライナで日々起きている惨状を想像してしまい、心が痛む。
 また、「いつの時代も、どこの場所でも、構造は同じ」という言葉を普遍的な真理と位置付ければ、時代の問題を解くキーワードになるように思えてきた。基地問題や沖縄の問題も、温暖化の問題も、そこにも「権力者と被害者という支配構造」が存在している。そこを見据え、真の解決に向かっていきたいものである。

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