叡智と私たちの関係は、アキレスと亀の論証のようなものである。叡智が常に先行しているのだ。それに到達するまでの途中は、その魅力を追いかける事は、それでもやはり素晴らしい道である。(p105)素晴らしい魔力、万物が変転すると言う燃えるような悲しい魔力よ! しかし、それよりもはるかに素晴らしいのは、過ぎ去ってしまわぬこと、存在したものが消滅しないこと、それがひそかに生き続けること、そのひそかな永遠性、それを記憶によみがえらせることができること、絶えずくりかえし、それを呼びもどす言葉の中に、生きたまま埋められていることである。(p106)
ここでいう叡智は、人によって違うかもしれない。しかし、人それぞれを成熟に向かわせてくれる魅力ある灯台のようなものであろう。魅力あるものに向かう過程そのものも、また素晴らしいと言っているところが魅力である。また、「存在したものが消滅しないこと」の素晴らしさは、古代ギリシャ文明など、数かぎりがない。ヘッセの言葉も、こうして呼び戻され、現代を生きる私たちに勇気を与えてくれている。
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