2021年11月15日月曜日

”若返り”などもったいない

 雑誌『サライ』の2021年10月号の「サライ・インタビュ」の相手は百歳のピアニスト室井麻耶子さんだった。「若返りたいと思いますか」という問いに対し、「そんなもったいないこと、できません」という思いもよらない返答だった。お金はいくら払っても若くなりたい、というのが普通だと思う。
 そういえば、画家の「いわさきちひろ」さんも、未熟だったころには戻りたくない、というようなことを言っていた。あやかりたいものである。
 室井麻耶子さんが九十歳で新居を建てた話もあった。この話で思い出したのが、彫刻家の平櫛田中さんが九十歳頃に、「あと20年寝かせておけば、立派な彫刻材になる」という大きな楠を取り寄せたという話である。二人に共通するのが、衰えることのない創作(創造)意欲であろう。この”強い意欲”が二人を長命にしたのかもしれない。
若返りたいと思いますか。
「全然。そんなもったいないこと、できません。なぜなら私の「頭陀袋」の中には、これまで積み重ねてきたこと、体験したことやさまざまな感情が、ぎゅっと詰め込まれているからです。ビアノを演奏する際は、その都度、頭陀袋の中から取り出しています」
頭陀袋とはなんの比喩ですか。
「そうね、悲しいことも嬉しいことも、あれもこれも放り込むべかしら。6歳の頃、わが家に黒い箱ピアノが届いた記憶。その時のピアノの弾むような音。大人に”なぜ?””どうして?”と質問した時の大人の困った顔。こぼれ落ちてきた感情を全部、袋の中に詰めてきました」
まんが「田中彫刻記」より


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