だいぶ前に、「凶悪犯罪があるところには、必ず、多くの軽犯罪がある。したがって、軽犯罪を軽視しないでその取り組み(軽犯罪防止活動など)を強化することで、凶悪犯罪も少なくできる」と、そんな法則があることを知った。しかし、その法則の名前も忘れてしまった。
その法則のことを、健康対策に用いていた本(『健康はピラミッド』、富士村寿著、プレジデント社、1987年)があった。この法則は、「大事故や大災害は、日常の小事故の注意によって防ぐことができるという、実に重要な法則」だが、「これこそが、健康維持の法則そのもの」だというのだ。つまり、「私たちは、日常三〇〇回の小事故、たとえば飲み過ぎ、寝不足、栄養の片寄り、食事時間の不規則、よく噛まない、ストレスなどなどを重ねているうち、カゼ、発熱、ひどい肩こり、痛、腰痛、下痢などを二九回重ね、そしてある日突然思いもかけぬ大病に倒れることとなる」。だから、「日常生活の上でのちょっとした注意や配慮」によって、些細な不調のうちに対策をとることが大切だ、ということになる。
その法則というのが、H・W・ハインリッヒというドイッの学者によって一九三一年に発表されたハインリッヒの法則である。「ハインリッヒの法則は、一、二九、三〇〇という数字で示されるもので、一回の大事故が起るときには、実はその前に二九回の中事故が起っている筈であり、またその前には三〇〇回の小事故が起っている筈であるという統計なのです。つまり、目立った災害がともなわないような小さな事故が三〇〇回も起っていることを軽視していると、その中に一割程度の中事故を含みながら、やがて一つの大事故を引き起す機会を、順次積み上げて行く」(p92)という。
この法則を知って、原子力発電所や核兵器の恐ろしさを再認識することができた。原子力発電所や核兵器が存在し、その管理運用をしている限り、小事故は必ず起き、順次積み上げられていく。そして、「その中に一割程度の中事故を含みながら、やがて一つの大事故を引き起す機会を、順次積み上げて行く」(p92)ことになる。これまでも大きな原発事故も、結局は「ハインリッヒの法則」によって引き起こされたと言っても過言ではあるまい。
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