2021年11月6日土曜日

死はあらゆる小道に立っている

 ヘルマンヘッセが自殺まで考えたことは昨日も書いた。それだけに、死に対する考察が鋭い。その上詩人の目で、詩人の言葉で表現しているので尚更である。「生と死」という言葉があるように、生と死は表裏の関係もあって一体である。そのことを「死はあらゆる小道に立っている」と表現しているが、我々は死の存在を意識の外に置いておくだけなのだ。
 それにしても、最後の言葉、「私たちが生を見捨てるやいなや死は君の中にも私の中にも入り込む」は凄い表現である。体だけでなく、「生の意識」を強く鍛えていくことも考えていきたいものである。

老いてゆく中で

若さを保つことや善をなすことはやさしい

すべての卑劣なことから遠ざかっていることも

だが心臓の鼓動が衰えてもなお微笑むこと

それは学ばれなくてはならない


それができる人は老いてはいない

彼はなお明るく燃える炎の中に立ち

その拳の力で世界の両極を曲げて

折り重ねることができる


死があそこに待っているのが見えるから

立ち止まったままでいるのはよそう

私たちは死に向かって歩いて行こう

私たちは死を追い払おう


死は特定の場所にいるものではない

死はあらゆる小道に立っている

私たちが生を見捨てるやいなや

死は君の中にも私の中にも入り込む(『人は成熟するにつれて若くなる』、ヘルマン・ヘッセ著、V・ミヒェルス編、岡田朝雄訳、草思社、1995年、p56〜57)

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