ヘルマンヘッセが自殺まで考えたことは昨日も書いた。それだけに、死に対する考察が鋭い。その上詩人の目で、詩人の言葉で表現しているので尚更である。「生と死」という言葉があるように、生と死は表裏の関係もあって一体である。そのことを「死はあらゆる小道に立っている」と表現しているが、我々は死の存在を意識の外に置いておくだけなのだ。
それにしても、最後の言葉、「私たちが生を見捨てるやいなや/死は君の中にも私の中にも入り込む」は凄い表現である。体だけでなく、「生の意識」を強く鍛えていくことも考えていきたいものである。
老いてゆく中で
若さを保つことや善をなすことはやさしい
すべての卑劣なことから遠ざかっていることも
だが心臓の鼓動が衰えてもなお微笑むこと
それは学ばれなくてはならない
それができる人は老いてはいない
彼はなお明るく燃える炎の中に立ち
その拳の力で世界の両極を曲げて
折り重ねることができる
死があそこに待っているのが見えるから
立ち止まったままでいるのはよそう
私たちは死に向かって歩いて行こう
私たちは死を追い払おう
死は特定の場所にいるものではない
死はあらゆる小道に立っている
私たちが生を見捨てるやいなや
死は君の中にも私の中にも入り込む(『人は成熟するにつれて若くなる』、ヘルマン・ヘッセ著、V・ミヒェルス編、岡田朝雄訳、草思社、1995年、p56〜57)
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