この論文には、政治的無関心がなぜ生まれるか、が簡潔に説明されていた。そして、驚いたことに、ルソーが今日の社会を予言していたことだ。ルソーは、「イギリス人は自分を自由だと思っているが、彼等が自由なのは選挙の日だけで、選挙がすんだ翌日から奴隷になる」[『社会契約論』第三篇第一五章]という言葉を残していたのである。この中の、「選挙がすんだ翌日から奴隷になる」という言葉を胸に手を当てて考えてみたいものである。
われわれの生活環境がすべてこういう政治に対する消極的受動的態度を培養するようにできていることは否定できないと思います。第一、日常生活がますます多忙になり職場での労働で人々が神経をすりへれて、政治に関心をもつ時間的余裕も心理的余裕もないというのが大多数の人々の状態です。しかも他方、大衆の娯楽機関や観るスポーツなど、政治などのメンドクサイことから逃避させる仕組はいよいよ発達します。
そこへもって来て、大きな政治問題がますます自分の手のとどかない国際情勢によって左右され、いくら政治に関心をもってもどうにもならないという絶望の気分がひろがって行きます。こうして、かつてルソーがイギリスの民主政治をふうしした言葉――「イギリス人は自分を自由だと思っているが、彼等が自由なのは選挙の日だけで、選挙がすんだ翌日から奴隷になる」[『社会契約論』第三篇第一五章]という言葉がいよいよ実感をもって現在の大衆民主政の時代に迫って来るようになったのです。(上同、p52)
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