それは、「アメリカは急選に軍国主義にむかって動きはじめ、いまや対外的にはファンズムで、かつての日本やドイツとそう変らない」と、同じようだが「アメリカは、ほかの国々の意向をかなり無視して行動することができるようになった点を指摘している」ということだ。アメリカをファシズムと評したのは初耳だが、これまでの戦争政策を見ると、的確は表現であろう。しかし、多くの人たちは、そうしたことを知らないか、深く考えずに、支配的な時代の思想に、[言葉は悪いが]毒されているか、である。
カリフォルニア大学のシュアマン教授のアメリカ危機説を伝えている。同教授によれば、アメリカは急選に軍国主義にむかって動きはじめ、いまや対外的にはファンズムで、かつての日本やドイツとそう変らない。ただ、このファシズムは、日本やドイツのそれよりも「技術的」であること、国内的には民主主義が維持されていること、この二点でちがいがあるだけだというのである。
「アメリカは何をなすべきか」(高坂正苑)では、アメリカが並はずれた力をもつようになった危険と不安を指摘してる。フランスのデュベルジュによれば、今や世界には二つの超大国が存在するのではなく、「一つの超大国と、一つの大国」が存在するようになったのであり、米ソの共存は「対等でない共存」だという。フランスの職略理論家ボーフル将軍も、現在の世界の権力政治の三極構造は、「弱体化しつつあるソ連」「混乱しつつある中国」「強大なアメリカ」のそれであるとして、それゆえアメリカは、ほかの国々の意向をかなり無視して行動することができるようになった点を指摘している。ソ連の弱体化というのは、スターリン主義的な非常時体制から、より日常的な「混合体制」とでも呼ぶべきものへと移行しつつあるソ連社会の全面的な変化のもたらしたものとみるべきであろう。中国の経験している混乱については、改めていうまでもあるまい。かくて、アメリカはおのれの力を過信して、ベトナム戦争において、無差別爆撃にまで進む か、その寸前で思いとどまるか、その選択に直面することになるであろう。アメリカが他からの介入を懸念することなしに北爆を強化できることは、かえってアメリカに失敗を犯させるかもしれない。このことは同時に、アメリカが並はずれた力の効果のなさに焦りを感じている現在、その力を背後に引っ込めて、賢明な外交政策をえらぶ絶好の機会であることを語るものである。(『現代の教養14巻:現代世界の焦点』臼井吉見編 、筑摩書房、1968年、p381〜382)
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