2021年10月19日火曜日

AIとカラー化した写真が語る戦争

 戦前・戦後の貴重な白黒写真355枚を、最新のAI技術と当事者への取材や資料をもとに人の手で彩色。カラー化した写真から、当時の暮らしを紹介した本が出版されている。『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(庭田杏珠・渡邉英徳[]著、光文社新書、2020年)である。白黒写真がカラー化されることによって、戦争の実態がより真実味を増して迫ってくるのがわかる。





 また、一枚のカラー化した写真(焼け野原を見つめるカップルの写真)をきっかけに広がった人の輪のつながりも感動的だった。それだけ、平和を求める声は大きいということであろう。改めて、「ますますのめり込んできている抑止力に頼る平和」がいつ壊れるかわからないような「ガラス張りの平和」であることに気づいてほしい、と思った。


ふたりが見つめた未来
 前のベージで紹介した、焼け野原を見つめるカップルの写真。はじめて目にしたときに心を打たれてカラー化し、2018年8月6日・広島原爆の日に「72年前の今日」の写真としてツイートしました。たいへん大きな反響があり、この文章を書いている時点で、約1万7千リツイート・約3万7千のいいね、約80件のリプライがついています。リプライの多くは、戦争と平和、あるいは核兵器と社会の関わりなどについて、個々人の意見が述べられたもの。活発な議論が交わされていました。
 その後、予期せぬことが起きました。この写真を添えた記事が朝日新聞に掲載されたところ、ご覧になった沼田清さん(共同通信社)から、写真の詳細が綴られた手紙が届いたのです。そこには、写真は共同通信社が1946年8月5日以前に撮影したものであること、被爆1周年・終戦1周年に向けた企画取材の際に全国の関係地へ取材手配した中の一枚であること。さらにカップル頭上に写る建物は「右近」という旅館であり、改築を経て飲食店として現存していることなどが記されていました。SNSから新聞へ、そして実世界の手紙へ。さまざまなメディアを通してコミュニケーションが拡がっていっ たのです。
 さらに2019年夏、日本テレビ「mewszero」の取材を受けたときのことです。被爆した福屋百貨店は、街に活気を取り戻すことを願い、終戦1年後にすでに「ダンスホール」を営業していたことを教えてもらいました。つまり、このカップルはダンスホールに来たお客さんだったのかもしれません。これらは、カラー化する前のモノク口写真からは知り得なかったことです。  その後、私たちは現存する串焼き屋「右近」を訪れ、ここでもさまざまなエピソードを伺うことができました。また、共同通信社の沼田さんからは、本書に収録したカラー 化写真の考証・写真のご提供など、多大なご協力をいただいています。
 一葉の写真のカラー化と対話を通して、さまざまな人々がつながりあうコミュニティが生まれました。このできごとは、いまでも記憶に強く残っています。
「戦争は終わった」。あの日、屋上でカップルが希望を込めて見つめた風景は、私たちが生きる現代、そして未来へとつながっています。(『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』)

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