2021年1月22日金曜日

歴史認識の共通化を

 寺島実郎著『日本再生の基軸 平成の晩鐘と令和の本質的課題』(岩波書店、2020年)は、今後の日本のとるべき進路が示されており、興味深かった。「脱亜入欧米」を基調としてきた反省に立って、「アジアを正視し、相互理解と相互交流の流れを創る覚悟」というのはもっともな話である。しかし、それらの大前提に「歴史認識の共通化」という課題は欠かせない。アジア諸国に侵略した事実など、大日本帝国がしてきた「負の遺産」を直視することなくしては、相互理解も相互交流も進展は望めないに違いない。そこまで言及してほしかった。

 令和日本の進路に関する大方の議論を集約すると、三つのキーワードに収斂するといえよう。一つは、「アジア・ダイナミズム」であり、今後二〇年、年率六%台の実質成長を続けると予想されるアジア(除く日本)のGDPは、少なくとも日本の一五倍に達していると推定される。ちなみに、二〇一九年の段階で、日本を除くアジアのGDPはすでに日本の四倍となった。日本の貿易総額におけるアジア諸国の比重は現在五割を超しているが、二〇年後には、間違いなく七割に迫っているであろう
 また、二〇二〇年代に六〇〇〇万人の外国からの来訪者を期待し、「観光立国」で活性化を図ろうとする日本にとって、インバウンド(外国人来訪者)の七割がアジアからという実態を直視すれば、四〇〇〇万人を超すアジアからの来訪者を想定しているわけで、貿易・人流など、あらゆる意味でアジアの成長力を吸収し、日本の新たな前進を実現するという認識に立つ必要がある
 このことが日本に突き付けるものは何か。それはアジアを正視し、相互理解と相互交流の流れを創る覚悟である。その前提として、日本がアジアにとって魅力ある存在たりうるのかという課題がみえてくる。アジア広域を巻き込んだ戦争が終わって七五年を迎えるいま、中国の強大化と強権化か際立ついま、日本の立ち位置が問われる。
 アジアの国でありながら、日本近現代史はその大半をアングロサクソン同盟で生きたという特色をもつ。一九〇二年から二三年までの「日英同盟」、そして敗戦後の一九五一年から今日までの「日米同盟」を国際関係の基軸としてきた。日本人の多くは、二つの同盟を挟む期間が「戦争から敗戦」という悲惨な迷走期だったため、「アングロサクソン同盟は成功体験」と認識する深層心理がある。
 つまり、「脱亜入欧米」を基調とし、ご都合主義的にアジアと関わってきた国が、経済的利害でアジアに接近しても、その成果は限られている。何よりも、相互理解の得られる「国造り」が重要である。近代史を省察し、アジアの脅威とならない「非核平和主義」の徹底、民主国家としての政治の透明性、日本モデルと、言わしめる産業・技術における先行性・創造性など日本の基軸が求められる。(寺島実郎著『日本再生の基軸 平成の晩鐘と令和の本質的課題』、p126〜127、強調は引用者による)

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