チャップリンの映画『独裁者』といえば、映画の中での「6分の演説」である。チャップリンは、その演説を「世界に向けて出す崇高な声明」と言ったという。日本国憲法前文も、考えるまでもなく「世界に向けて出す崇高な声明」である。チャップリンの崇高な心意気は、しっかりと日本国憲法に引き継がれているといえよう。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。(「日本国前文」より)
6分の演説。チャップリンの言葉を借りれば「世界に向けて出す崇高な声明」。そのエッセンスは、こんな内容だ。
「私は皇帝なんかになりたくない。だれをも支配、征服したくない。私たちはお互いを助けたいと思っている。人間とはそういうものだ。お互いに悲しみながらでなく、幸せに生きたい。兵士諸君、獣に身をゆだねてはならない。彼らはあなた方を奴隷にし、大砲の餌として使う。あなたは機械ではなく人間なのだ。心に人類愛を持つ人間だ。兵士だちよ、隷属のためでなく自由のために闘おう。あなた方には幸せを築く力がある。人生を自由で美しいものにする力がある。民主主義の名のもとに、その力を使おう。新しい世界のために団結して闘おう。世界を自由にするために闘おう。国の壁を取り外し、貪欲、憎しみ、不寛容を追い払おう。理性的な世界のために闘おう」。
兵士たちを前に高らかにこう語ったあと、床屋は愛するハンナに呼びかける。「ハンナ、僕の声が聞こえるかい。見上げるんだ。雲は切れ、太陽の光が射しこもうとしている。ぼくらは暗闇から光の、新しい世界に入ろうとしている。人々が貪欲さと憎しみと残忍さを克服した世界に。見上げるんだ、ハンナ。人間の魂は翼を得て、虹に向かって羽ばたこうとしている。ハンナ、見上げてごらん」。(『凛凛チャップリン』伊藤千尋著、新日本出版社、2020年、p110~111)
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