2020年6月29日月曜日

日本の新憲法は、正当な道・ただ一つの道

 マッカーサーは「日本が法によって一方的に成就しようとしてみることを、つまり主権の行使としての戦争を放棄することを、すべての国家も成就したときにのみ、可能である」といい。「かやうな放棄は、同時的に普遍的に行はれなくてはならない。すべてがそれを行ふことを要し、さうでなければ無意味である」とまで言っている。
 しかし、同時的に行うことなどできない。どこかの国が、まず始めないことには、前に進めないことは明らかだ。だから日本が、その旗手として、先陣を務めようというのである。この理想を離れて(改憲によって)は、日本国憲法でなくなってしまうことを、改めて確認しておきたい。

 日本の新憲法があらゆる場合を通じて絶対的に戦争を否定し、交戦権を放棄し、徹底的、絶対的に軍備を廃止したことは、世界史上実に画期的な事実と言はねばならない。思想家、宗教家、哲学者でさへ、徹底的に之を主張する者の極めて少かった絶対的平和論を、日本の新憲法は実定法として規定したのであって、それは太平洋戦争を遂行した旧日本よりの驚くべき飛躍であるに止らず、世界の平和思想及び平和政策の歴史に於いても亦、驚嘆すべき飛躍であるのである。この点に於いて日本の新憲法は、世界の平和愛好国民の先頭に立ち、絶対平和論の旗じるしを掲げて進む旗手となったのである。
 この絶対平和の理想を、日本の新憲法はひとり日本の国是として宣言しただけでなく、それが国際社会の普遍的原則であることを確認して居るのである。それは各国家に普遍的に妥当する世界的理想として、宣言せられている。言を換へて言へば、世界の平和を愛好する他の諸国民が、ひとしく日本の新憲法に掲げる原則をばそれぞれの国家の憲法に採用し、日本の新憲法と同一の国是を定め、同一の国策を実行するとき、世界の平和は実現するのである。昭和二十一年(一九四六)四月五日、東京で開かれた連合国の対日理事会に臨んで、マッカーサー元帥のなした演説の一節に、次の言葉がある。
「日本の新憲法における戦争放棄の提案を、世界のすべての国民が慎重に考慮するやうに、私は勧告したい。それは正当な道を、ただ一つの道を示している。国際連合の目的はまことに立派なもので、その目標は本当に偉大な高尚なものであるけれども、それが永続してその目的と目標を達成し得るのは、日本が法によって一方的に成就しようとしてみることを、つまり主権の行使としての戦争を放棄することを、すべての国家も成就したときにのみ、可能である。かやうな放棄は、同時的に普遍的に行はれなくてはならない。すべてがそれを行ふことを要し、さうでなければ無意味である。」
 かくして日本は、世界平和の理想を達成する為めに、平和を愛好する諸国民のとるべき政策を率先して実行したのであり、その意味に於いてすでに、平和を愛好する国際社会において、「名誉ある地位」を占めたのである。而もこの名誉を空虚なものとせず、新憲法の絶対平和原則を言葉だけのものとしない為めには、その意味するところをよく深解し、誠実を以てその理想の為めに努力しなければならない。その意味をよく自覚し、その実現の為めに誠実なる国民的努力を尽すときに、国際社会において占める日本国民の「名誉ある地位」は、その実質を得るのである。日本国民は果して自己の制定した新憲法の意味を、自ら意識してみるのであらうか。(「新憲法の平和原則」『矢内原忠雄全集 第19巻 時論 2』、矢内原忠雄著、岩波書店、p504~505、強調は引用者による)

0 件のコメント:

コメントを投稿