2023年9月21日木曜日

バスに乗り遅れるな

 戦争中に、「バスに乗り遅れるな」という言葉が流行したそうです。鷲田清一さんが、朝日新聞コラム「折々のことば」で紹介した言葉「国民的熱狂をつくってはいけない(半藤一利)」の解説を読んで知りました。その解説が
 「バスに乗り遅れるな」。戦時下に流行した言葉だ。欧州制圧をめざすナチス・ドイツの進撃に倣うべく、報道機関と民衆は「アジア新秩序の建設」の声に乗った。時代の勢いに押し流され、自らもその動力の一端となって、戦争への堰(せき)を踏み潰していったと、作家は語る。「われら」という意識の高揚は排他性と攻撃性を強め、やがて暴発を招く。『戦争というもの』から。(「折々のことば:2847 鷲田清一」『朝日新聞』、2023年9月10日)
 です。
 この解説を読んで、今また、現代版「バスに乗り遅れるな」が進行中ではないか、と思いました。ウクライナ支援という名の軍事費倍増計画です。ロシアが起こした戦争は悪いが、反撃しているウクライナの戦争は正義の戦争だ、だから、軍事費増も正義に適ったものだ、という空気が支配的になっているのです。
 しかし、声は小さいけれど、「戦争にいい戦争はない」という声も存在しています。人の命は何ものにも変え難いと思われているからです。次に紹介する寂聴さんの声が典型です。「戦争にいい戦争はない」のだから、あらゆる努力を傾けて終戦に向かうべきなのです。現代版「バスに乗り遅れるな」は、とんでもないことなのです。それだけ戦争状態が長引き、殺される人たちが増えていくからです。
 でも、いい戦争なんてありませんよね。いつの時代も戦争の犠牲になるのは、国民です。「戦争にいい戦争はない」と先生が言い続けたその言葉の裏には、正しい戦争、いい戦争と教え込まれ、それを信じた自分自身への反省があったと思います。
 仏教者としても「殺すなかれ、殺させるなかれ」というお釈迦さまの言葉を言い続けました。戦争はすべて人殺し。どんな理由があろうとも、人が人を殺すことは許されないと訴えてきました。ロシアのウクライナ侵攻に対しても「戦争にいい戦争はない」「殺すなかれ、殺させるなかれ」と怒っているはずです。(「(寂聴 愛された日々)秘書・瀬尾まなほさんに聞く:6 「いい戦争はない」訴え続け」『朝日新聞』、2023年9月21日)

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