山彦(やまびこ:山の霊、あるいは山の神の声と考えられてきた)のことを、今まで何の疑問も持たずにエコーとも呼んできました。しかし、エコーとは、ギリシャ神話に出てくる木霊(こだま)のことを初めて知りました。しかも、画家アレクサンドル・カバネルによって作品『エコー』にもなっていました。このことを教えてくれた中野京子さんの解説は次の通りです。
浮気となると、今度はゼウスの正妻にして結婚を司る女神ヘラが登場するのも定番だ。ある時へラは、夫がまたニンフたちと戯れていると聞き知り、現場を取り押さえようと地上に降りてきた。中野京子さんの解説によって、ギリシャ神話には現代社会にも通用する真理が語られていることを知りました。神話ということで敬遠していましたが、ギリシャ神話を見直しました。
ゼウスの相手をさせられた女神やニンフや人間の女性たちが、へラの嫉妬を買ってどれほどひどい目にあわされてきたかは誰もが知っている。心優しいエコーは仲間のニンフたちを逃がそうと、長いおしゃべりで時間稼ぎをしてヘラを足止めした。
だがしばらくしてヘラはエコーの策略に気づき、激怒する。そして二度とおしゃべりができないようエコーから言葉を奪い、相手の言葉の最後の部分だけを繰り返させる、という罰を与えた。
ギリシャ神話が何世紀にもわたり、世界中で繰り返し語り継がれる理由がよくわかる下りだ。女神が気に入らぬ相手から理不感に言葉を奪うこのやり方は、まさに今現在、世界中の独裁国家で、いや、民主主義を標榜する国においてさえ起こっている、権力や経済を握った一握りの者たちによる報道規制、偏向報道、個人ネット配信の規制強化と突然のバン(利用停止)そのものではないか。(中野京子著「愛の絵」『PHP』、2022年10月、p64)
それにしても、「言葉を奪うこと」の罪深さと、報道規制や偏向報道も「言葉を奪うこと」になるという中野京子さんの指摘に、これこそ、民主主義の度合いを図るバロメーターではないか、と思いました。そして、兵器を防衛装備品といった言葉でカモフラージュすることも、「言葉を奪うこと」になると思いました。真実の言葉を隠してしまうからです。

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