2023年6月15日木曜日

柄谷行人思想の限界

 雑誌『文學界』(2023年7月号)記事「柄谷行人 バーグルエン賞授賞式での挨拶」を読んで初めて、「哲学のノーベル賞」を目指して創設されたというバーグルエン賞の存在と、柄谷行人氏がバーグルエン賞を受賞したことを知った。『力と交換様式』(柄谷行人著、岩波書店、2022年)で集大成された仕事が認められたようである。
 結論的なことを示すと、
資本主義の構造と力、呪力、権力、資本の力が結合した「資本=ネーション=国家という結合体は、二一世紀の今日においても支配的であり、(中略)そしてこれは、致命的な欠陥 —— 戦争・貧困・差別など —— を伴うシステム」(上同、p238〜239)だという。ここまではいい。しかし、「これらの力を克服するのは極めて難しい」(『文學界』、2023年7月、p239)と言って、真の解決策が示されていない。
 では、どのような解決策が示されているのか。
 これらを超える力として、交換様式Dを考えた。が、われわれの意志によって実現できるものではない。われわれが意識的に実現できるのは交換様式Aだけです。
 私はこう書いたのです。「Dは、向こうからやってくる」と。(上同、p239)
 結論を知って、正直がっかりした。そんな消極的でいいのか、と。それに、「意識的に実現できるのは交換様式Aだけ」というのもおかしい。言っていることが矛盾している。交換様式Aの真の力は、”霊的な力、すなわち、人間の意志を超えた「力」”(上同、p238)のはずだからである。
 それでは、真の解決策はどうあるべきなのか。
 それは、交換様式Aの真の力の大きさを知り、それに対抗できるだけの、あらゆる力を意識的に結集していくことである。「万国の意志は団結せよ」である。人間の意志を信じたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿