雑誌かなんかで吉川経夫氏の存在を知り、「松川事件の教訓」を読みたくて『吉川経夫著作選集 第5巻』(吉川経著、法律文化社、2001年)を借りたが、専門的すぎて読めなかった。しかし、私でも読める「憲法理念に忠実な判決 —— 最高裁、憲法九条の解釈迫らる —— 」とか、「裁判批判論 —— 専門家の偏見と素人の常識の対決 —— 」とかもあり、そのなかに、政府が行ってきた現在の軍備拡大路線を「憲法九条を真っ向から無視してやみの再軍備を強行」と表現しており、よく言ってくれたと心地よかった。以下に引用する。
裁判所は政治上の問題に介入しないという名のもとに、憲法九条の解釈をタブーのようによけて通ろうとするのが、最高裁判所を始めこれまでの裁判所に共通した態度であった。そして、そのことが政府が憲法九条を真っ向から無視してやみの再軍備を強行するのを容易にするという大きな「政治的」効果を生んでいたことは否定しえない。このような従来の安易な態度を一てきして、与えられた法規範を厳正に適用するという裁判所本来の使命を忠実に果たしたものが、今回の東京地裁の砂川判決である。(p502)
さらに、駐留米軍に対する違憲性についても、次のように、わかりやすい表現で紹介していた。
法律の専門家である裁判官が「日米安保条約によって米軍の駐留を許容していることは、右の戦力保持の禁止に抵触し、したがって駐留米軍は憲法上その存在を許すべからざるものである」と断定している意義は大きい。この判決が「憲法の理念に忠実な解釈がなされた結果、当然に導き出された結論であるという点に大きな価値をもっている」(p503)砂川判決の「要旨は、憲法九条は、自衛権を否定するものではないが、戦力の保持は自衛のためであっても一切許していないこと、日本政府が日米安保条約によって米軍の駐留を許容していることは、右の戦力保持の禁止に抵触し、したがって駐留米軍は憲法上その存在を許すべからざるものであること、右のように駐留米軍が憲法上その存在を許すべからざるものである以上、米軍基地への立入りを一般法規である軽犯罪法の規定以上に重く罰して基地内の平穏を一般国民の土地等の平穏よりも一層厚く保護しようとする刑事特別法二条は、憲法三一条の適正手続き条項に違反し無効である、というにあって、別に突飛な議論でも何でもない」(p502) 。
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