2020年11月14日土曜日

安全保障の手段でもある市民的自由

 『永遠平和のために 啓蒙とは何か 他3編』(カント著、中山元訳、光文社古典新訳文庫)を借りた。「永遠平和のために」を新訳で読んでみたいと思ったからだ。さらに、カントがどのようなことを書いているかを、カント全集で調べ、18巻に 「永遠平和のために 準備原稿なるものが存在していることもわかった。大いに興味がある。

 『永遠平和のために 啓蒙とは何か 他3編』は、まずさっと解説から読んでわかりやすい箇所を見つけたのでちょっと読んでみる。 特に興味を引いたのが「まずカントはそれぞれの国が自国の文化を発展させることで、他の諸国にたいする威信を高めていることを指摘する。高度な文明を発達させた国にたいしては他の諸国が憧れを抱くのであり、これは現代においても変わりはない」だ。このような文化の発展も、安全保障になる。憧れを抱く国には、学ぼうとはしても、攻撃仕様などとは考えもしないに違いないからだ。

 自然は人間が戦争のうちに滅びるのではなく、世界市民状態を構築することを望んでいるに違いないというのは、カントの信念であり、願いでもあった。ルソーは人間が未開から文明に到達するとともに、不平等が生まれ、人間は堕落すると考えた。しかしカントは、人間が未開から文化に、文化から文明に、そして文明から道徳性の状態へと進歩することを信じていたのである。啓蒙はまさにこの進歩を進める原動力であり、その原理でもあった
 カントはさまざまな国家がこの理想的な状態に進展するために、ほかにもさまざまな要因が機能すると考えている。これらの要因について検討するのが第八命題である。まずカントはそれぞれの国が自国の文化を発展させることで、他の諸国にたいする威信を高めていることを指摘する。高度な文明を発達させた国にたいしては他の諸国が憧れを抱くのであり、これは現代においても変わりはない。
 またこのように文明を発達させるためには、市民的な自由が守られていることが必要であり、抑圧的な国家では文明は委縮するものである。自由はその国の名誉心を高めるために貢献することができるのである。 さらにこうした市民的自由が守られている国では、商業が発展し、他の諸国と密接な通商関係を維持するようになる。これがさまざまな国との友好的な関係の構築に貢献することになる。自由を制約すると商業的な活動が低迷し、他国との通商にも影響して、国力が低下する可能性があるのである。啓蒙の原則は、市民的な自由の確立と、商業的な発展と通商関係の維持のために役立つものである。(p312〜313、強調は引用者による)

 こうして読んでみると、市民的自由さえ、安全保障の手段になることがわかる。市民的自由は、文明の発達、国の名誉心、密接な通商関係の維持発展に欠かせないからだ。そういう意味でも、この度の学術会議任命拒否問題は、市民的自由の攻撃でもあり、妥協、諦めで終わらせてはならない。

0 件のコメント:

コメントを投稿