2020年11月10日火曜日

全面核戦争へのシナリオ

 前に、『核のボタン』(ウィリアム・ペリー、トム・コリーナ著、田井中雅人訳、朝日新聞出版)という本を紹介しながら、40年も前に児童文学の世界で、「ノイローゼのボタン係と、気がくるったボタン係が核戦争を起こし、その後の世界を描いていた」(『魔法のぶた』、司修著、汐文社)ことを書いたが、『核のボタン』に、実際に起こりうる「核戦争のシナリオ」が詳しく書かれていた。改めて、最悪の事態を想定し、対策を講じる必要を痛感した。
 そして、「核兵器をめぐる物語は終わりを迎える。そして、どんな終わりになるかは私たち次第である。核兵器の終わりか、それとも、私たちの終わりか?」(ベアトリス・フィン・2017年のノーベル平和賞受賞で)という言葉を重く受け止めたい。

 相手のICBMが発射されたことを示す情報を早期警戒街星などがキャッチし、最高指導者(今は共に大統領)がその警報を受けて報復の発射命令を出せば、それから数分以内に発射できる態勢を常にとっている。たとえば、「ロシアがICBM発射」の警報が出て、その他の分析も合わせて米国の大統領に届けられれば、ロシアのICBMが米国のICBM基地付近で爆発して多くの基地を破壊する前に、すなわち分単位のごく短い時間のうちに米国大統領は報復攻撃するかどうかを決断しなければならない
 最大の問題は、発射情報の真偽を確かめる時間があまりにも短いことだ。悪くするとシステム誤作動や、情報の誤認、さらにはサイバー攻撃によって誤った発射情報が大統領に届けられ、実際にはロシアのICBMなど発射されていないのに、きちんと情報の真偽が確認されないまま、米国のICBMによる大規模な報復攻撃命令が出される恐れがある。ICBMはいったん発射されれば核爆発を中止するすべはなく、誤った判断によって飛び立ったICBMは結果的に、「米国の核先制攻撃」をもたらすことになる。それに対して相手が大量報復すれば、全面核戦争という最悪の事態に転落しかねない。本書によると、「誤警報はこれまでに何度も起きているし、これからも起こりうる。例えば、1980年に国家安全保障担当大統領補佐官がカーター大統領にまで本当の攻撃だと報告を上げかけたが、ぎりぎりのところで幸運にも誤警報だと判明した」。
(中略)
 だが、事は米国に限らない。ロシアもほぼ同様に警報下発射態勢をとっている。米ロの双方で、システム異常や意思決定プロセスに関わる人間の判断ミスによって「核のボタン」が押されるリスクが、常に存在するのである。(「解題」吉田文彦著、p295~297)

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