カントといえば、『純粋理性批判』といった難解な哲学書 の著者として知られています。そんな彼が、「人間学」についての研究者でもあったことを最近知りました。しかも、『人間学』を出版したのが七十四歳のときでした。亡くなる六年前です。この事実だけでも、その意欲に感嘆し、励まされました。
そして、序文の、最初の言葉が、また素晴らしいのです。それは、「文化におけるあらゆる進歩は、これによって人間が自分を磨くものであるが、それにはこの獲得せられた知識や練達をこの世のために役立てるという目標がある」という言葉です。文化におけるあらゆる進歩は、人間を磨くと同時に、この世のために役立てるというのです。しかも、「役立てうる世間のうちで、最も重要な対象はといえば人間(原文は傍点)」だというのです。なぜなら、「人間こそ人間自身の最終目的なのだから」と。
ここでいう「人間こそ人間自身の最終目的」ということが意味することはなんでしょうか。それは、人間にはある目標とすべき完成形があって、「文化におけるあらゆる進歩は、これによって人間が自分を磨」きながら、その完成形を目指すのだと思います。そのことをカントは『啓蒙について』で言及しているのではないでしょうか。
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