2023年3月4日土曜日

構造体としての日本国憲法

 日本国憲法の思想を体現しているような本『非武装国民抵抗の思想』(宮田光雄著、岩波新書、1976年)のはじめに、南原繁 の言葉が掲げられていた。「いま世界が必要とするものは、核実験ではなく、人類の理性と良心の実験でなければならぬ。われわれの良心と理性が麻痺するならば、核戦争によって人類が滅びる前に、すでに人間としての存立を喪失したのも同然である。――南原繁『日本の理想』――」という言葉だ。この言葉は、「明確な目的地と方向性を示した『旗』としての言葉」(『「言葉にできる」は武器になる。』、梅田悟司著、日本経済新聞出版社、2016年、p190)そのものである。
 そういえば、日本国憲法前文も、目的地と方向性を示した文書である。目的地は明らかに世界の平和であり、方向性が憲法の三原則であろう。そして、前文で明らかにした方向性に従って、本文の各条項が定められている。つまり日本国憲法は、前文と本文が一体となった一つの構造体なのである。それゆえに、一本の柱でも変えられると、構造体に歪みが生じ、目的地にたどり着くことが不可能になってしまう。だからこそ、憲法の改定は難しいのである。
 逆に考えると、日本国憲法が「前文と本文が一体となった”しっかりとした”一つの構造体」だからこそ、七十数年にわたって命脈を保ってきたと言えるのではないだろうか。困難な時こそ初心に帰ることが大切である。あらためて、憲法の初心に立ち返り、日本国憲法という構造体の補強なりメンテナンスが必要なのかもしれない。

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