2023年3月25日土曜日

過去を否認するものは!

 ヴァイツゼッカー大統領演説で有名な言葉は、「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります」である。しかし、この言葉には続きがあって、「非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです」と続く。よく読むと、一般に知られている前段の言葉よりも、、後段の言葉の方が重要であろう。このことは、似たようなヴァイツゼッカー大統領の言葉「過去を否認するものは、その過去を反復してしまう危険にさらされているのであります」(『《荒れ野の40年》以後』、宮田光雄著、岩波書店、2005年、p48)を知るとよりはっきりする。なぜか。
 この場合の過去は、歴史の負の遺産のことを指している。ナチスドイツによるアウシュビッツの悲劇や、日本軍による南京虐殺、あるいは太平洋戦争における多くの悲劇などがそうである。こうした過去を心に刻んでおれば、2度と同じ過ちは起こすまいという意志が生まれる。しかし、そうしたことはなかったことにしたり、忘れてしまえば、同じ過ちを起こし易くなってしまうということだ。
 ヴァイツゼッカー大統領は、だからこそ、過去の負の遺産をしっかり心に刻むことの大切で合うことを次のように述べている。
「われわれは、独裁制を、戦争を、不法国家を、ほとんど他の民族が経験しないであろうような仕方で経験したのであります。多くの明暗の章をもつわれわれの歴史の遺産の中でも、これは、とくに重い意味をもつ一章となりました。しかし、これをなおいっそうよく理解し、いっそう明瞭に記憶にとどめ、そのもたらした結果にたいする責任をいっそう明確に担おうとするならば、この過去からわれわれのアイデンティティの危機が生じるということは、それだけ少なくなるでしょう。それどころか、われわれは、いっそうよく自分自身とまた隣人たちにとりましても理解されるようになるのであります。」(上同、p34)
 日本も、同じような体験をしている。ゆえに、日本における「独裁制を、戦争を、不法国家を」わかり易くとらえ直すことが必要である。色々語られているが、膨大であったり、わかりにくかったりして、伝承されているか心許ないからだ。これからの一つの課題である。

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